2017年07月12日(水) 更新

『採用ブランディング』でミスマッチがなくなる?元DeNA人事が語る新しい時代の採用の在り方!

「新卒は3年で辞める」と言われるように、採用を取り巻く状況が目まぐるしく変化した昨今において、大きな問題となっている企業と人材のミスマッチ。 そうしたなか、今の時代に必要なのは”採用ブランディング”であると佐藤タカトシさんは語ります。 今回は書籍『採用ブランディング』をもとに、数々の採用サポートを手掛けてきた佐藤タカトシさんと、編集者である荻野史暁さんにお話を伺い、新しい時代の採用活動について語っていただきました。 『採用ブランディング』出版記念インタビュー。 ファシリテーターはポート株式会社の技術開発室室長である、大月英照が務めます。

元DeNA人事が語る“採用ブランディング”とは?

大月:今回は『採用ブランディング』を書かれたお二人に、本を書かれた経緯やこれからの採用について、考えを伺っていきたいと思います。 まず自己紹介からお願いします。

佐藤:佐藤タカトシです。よろしくお願いします。 私は最初、大手人材系企業の制作部門に11年ほどいて、100社以上の企業で採用活動のサポートを行ってきました。そのあとDeNAに入社して3年間、人事として自社のブランディングとしてイベントやメディアの立ち上げたという経歴になります。現在は、採用支援を行うcore words株式会社を立ち上げてCEOを務めています。

荻野:株式会社ビー・エヌ・エヌ新社、編集者の荻野史暁と申します。今回は“採用ブランディング”を書籍化するという企画を立ち上げ、実際に企業と人材のミスマッチをなくす“採用ブランディング”を行ってきた佐藤さんにお手伝い頂き、本の制作を行っていきました。

今、なぜ、採用ブランディングが必要なのか?

大月:今回、企業と人材のミスマッチをなくすために『採用ブランディング』を書かれたというお話ですが、今、なぜ、”採用ブランディング”が必要なのだとお考えなのでしょうか?

佐藤:これは本の冒頭にも書いたのですが、企業の採用事情が大きく変化していている今だからこそ、企業と候補者のお互いが幸せになるために”採用ブランディング”が必要だと感じました。

採用事情の変化としては、大きな出来事が3つあります。

まず、「売り手市場の傾向が強まっている」こと。リクルートワークス研究所の調査によると、2017卒の学生の求人倍率は約1.74倍と、5年連続で上昇を続けています。そうした売り手市場となっている新卒採用事情のなかで、少しでも他社と差別化し、学生たちに魅力的な企業だとして目を向けてもらえる方法が“採用ブランディング”であると考えました。

次に「就活期間の短期化」です。2017卒の採用活動においては、採用サイトのオープンが3月、企業の選考期間が6月となっていましたが、7月1日時点での内定者数は全体の70%にも達していたそうです。つまり、実質的な活動期間は3ヶ月ほどしかないわけですよね。そんな短期間に、求める学生と出会うというのは企業としてもキツイですよと。そのための施策としても、”採用ブランディング”は効果的です。

最後に「採用チャネルの増加」。就職サイト、説明会、OB訪問、SNSなど、一昔前に比べて企業と出会える機会は圧倒的に増えました。ですが、そのぶん数ある企業の中で埋もれてしまうことも多くなっています。学生たちに効果的にアピールするためにも、欲しい人物像を決めて、その人に向けてしっかりとしたメッセージを発信し続けることが大事なのです。

大月:たしかにチャネルが分散して、チャネルごとにメッセージが変わると、会社の魅力が伝わりづらくなりますからね。それを短期間、かつ売り手市場のなかで競り勝つというのは難しいのかもしれません。

就職・転職で失敗する人が多いのは、企業側にも原因がある!?

ちなみに、この本が書かれたのはどういった経緯からですか?

荻野:私が“採用ブランディング”をテーマにしたデザイン書籍の企画をしていたところ、ネット上で佐藤さんの存在を知り、メールでオファーをかけました。

打ち合わせも多くはやっていないので、今回で会うのは4回目です(笑)

大月:そうなんですね!佐藤さんは、もともと“採用ブランディング”に関する本を書いてみたいと考えていたんですか?

佐藤:いつかはやってみたいとは考えていました。というのも、企業が“採用ブランディング”をきちんと行うことが、学生や転職者の人生にも大きな影響を及ぼすだろうと感じていたからです。

就職、転職に失敗する人が多いのは、採用する企業側にも原因があるといえます。採用というのは優秀な学生を「集める」ものではなく、企業のビジョンに共感し、それを実現してくれる学生と「出会う」ためのコミュニケーション活動。それをより効果的な「出会い」に変えるためにも“採用ブランディング”は不可欠ですし、それを怠ってはいけないと考えています。

採用ブランディングで大事なのは“誰に対して言うか”

大月:なるほど。具体的に、佐藤さんの考える“採用ブランディング”とはどういうものですか?

佐藤:採用ブランディングというのは、“その会社で働きたい”と思う状況を作り出すことです。

学生や転職者に、会社の強みや理念まで伝わったうえで“その会社で働きたい”と思ってもらう。企業としての知名度やブランドとは関係なく、働くという観点で会社の魅力を知ってもらうということですね。

大月:ということは求職者に対して、「ウチの会社はこうですよ」、「働く上でこんなにいい環境ですよ」とアピールするということですか?

佐藤:簡単に言うとそうですね。その中でも“誰に対して言うか”が重要になってきます。

その会社に入れば誰もが幸せになれるわけではないので、自社の求める人物像にピンポイントで届ける必要があるわけです。そういう意味ではマスではない、狭い範囲のブランディングになるかと思います。

欲しい層はどういうペルソナで、どういう情報を届ければ刺さるのか。それをしっかり考えて採用ブランディングに落とし込まないと、誰にも刺さらないものになってしまうのです。

その手法の一つとして採用サイトや印刷物のデザインがあって、この本はそうした“企業ブランディング”の事例集になっています。

荻野:もともとデザインを紹介する本なので、最初はタイトルを『採用のためのコンテンツとデザイン』にしようかとも思いました。”採用ブランディング”といっても、一般的にはあまりなじみがない言葉でしたから。

ですが、より深く突き詰めたとき、コンテンツに落とす前のコンセプト・テーマ立てが重要に思えたので、タイトルを『採用ブランディング』としました。

デザインの本なので“ブランディング”という言葉も呑み込みやすいですし、そこに“採用”がつくことで、新しい採用の在り方を分かりやすく提示できるのではと思ったからです。

「今の採用は“煙の中で握手している”ようなもの」

大月:そもそもの話になりますが、ミスマッチを解消したいと考えたきっかけは何ですか?

佐藤:これは人事をやっているとよく感じることだと思うのですが、ミスマッチがあると“雇う側と雇われる側、双方にとって大きな不幸になる”んですね。

会社の風土に合わないので活躍できない場合もありますし、思っていたのと違い、入社後すぐに退職するケースすらあります。それは企業にとっても候補者にとっても不幸な出会いなので、それをなくしていきたいと思っています。

そのためにも企業側がきちんと“伝えなければいけない”わけです。「自分たちはこういう会社で、こういう人を求めています」と。候補者側も「どういう人生を歩んで、社会になにを提供していきたいのか」を考えて、企業側に伝えないといけない。そのどちらかを怠ってしまうと、ミスマッチが起こる可能性が高くなる。

今の採用は、煙の中で握手しているようなケースも多い。その煙を晴らすためにもお互いが良い出会いを持てる努力をしましょうと。その一つが“採用ブランディング”ですね。特に新卒にとっては、1社目で人生が決まる部分もありますから。

BtoCの企業だと、商品に惑わされないブランディングが必要?

大月:採用活動って、企業も候補者も非常に体力を使うものですし、新卒で失敗するとお互い大変なことになりますよね。

そういった意味でも、ミスマッチをなくしていきたいというのはとても分かります。

また、それを避けるためにも採用サイトのファーストインプレッションで適切な人物に選んでもらえる“採用ブランディング”は理想ですよね。

特にBtoCの企業だと、良くも悪くも商材があって変にバイアスがかかってしまっていることもありますから。“洗剤メーカーだから清潔感のある人が欲しいだろう”とか(笑)

ですが、BtoBの方が会社数は多いですし、その他の会社も含めて適切なブランディングができていることが理想ですよね。

そういった意味で、今回の書籍で“採用ブランディング”に成功している企業としてはどんなものがありましたか?

“採用ブランディング”に成功している企業とは?

荻野:成功事例でいうと、どの企業でも「正直に伝えることが重要」というお話はありましたね。

個人的には竹村コーポレーションさんが面白かったです。コンセプトは「ありのままの社風を伝えたい」で、本当に何も飾り立てず、社員がタメ語全開のチャット形式で企業紹介が行われるという作りになっていました。

他にも「マニフェストを公開する」というページの人材系の企業は印象的でしたね。その中で“私たちは正直に採用活動をしています”という打ち出し方をしていて、大手も中小も、同じコンセプトで採用活動をしているというのは面白かったです。

正直に伝えるというのは、一つポイントかもしれません。

ポイントは“正直”であり、“弱み”を見せること

荻野:あとデザイン面でいうと、ゲーム性があって面白かったのはGMOペパボさんですね。

採用ページの入口が「はじめまして」と「さようなら」に分かれていて、二択形式でページが進んでいくんです。で、何を選んでも最後には「エントリーしますか?」と、「はい」、「いいえ」のあるページにいきつくという。

しかも、その分岐式で進むページの中で、会社の様子や事業内容が紹介されていくという仕組みですね。

佐藤:説明会でも面白いことをやっている会社なので、そういった社風に反応する学生が欲しいんでしょうね。「みんなでワイワイ面白いことをやろうぜ」みたいな。そういう企業の特徴が出ていると思います。

大月:どんなポイントも隠さず、魅力的に見せているというのが面白いですね。

それもただふざけているだけじゃなく、企業の伝えたいことはきちんと表現できているので、ブランディングとしてはすごくいいと思います。

ただ「面白くしようぜ」はブランディングじゃない

大月:それではこれらを踏まえたうえで、採用活動の上で企業がすべきことはなんだと考えますか?また、就活生、転職者といった候補者目線で意識すべきことも教えて頂ければと思います。

荻野:企業の話でいうと、今回は課題と解決という面でアウトプットの方法を紹介していきましたが、どの企業を見ても課題を見つけるのが大変そうでした。

採用サイトを作るときにやりがちなのが、「ゲームっぽくしようぜ!」、「豪華にしようぜ!」というのがありますよね。でも、それではブランディングとはいえません。

目標があって、それに向けた課題があってこその“採用ブランディング”だと思います。その解決方法として採用サイトや本があるという流れですね。それをきちんと組み立てることで素敵なものができるし、結果もついてくるのだと思います。

なので、課題を見つけてしっかりと流れを組み立てるということでしょうか。今回『採用ブランディング』で取り上げた企業は、それをしっかりと達成して作り上げている企業ばかりだったので、ぜひ本書を見て参考にして頂ければと思います。

候補者と企業がお互いハッピーである状態とは、両者に「軸」があること

佐藤:自分が大事にするものをきちんと考えてほしいと思いますね。自分の生きるベクトルを見つけて、それに従って企業を選ぶべきだと僕は思うので、就活生や転職者には自分の軸をしっかりと定めてほしいです。

いわゆる「会社が嫌だから」とか「給料を上げたいから」とかで企業を選んでも仕方がない。「その会社に入ることで何を得たいか?」、それを考えて企業を選ぶべきだと思いますね。

そうやって軸を定めてから(“採用ブランディング”を施している)会社を見つけることで、間違いのない企業選びができるのではないでしょうか。

自分に合わない会社を選んでも辛いだけですから(笑)いきいきと働ける環境を見つけて、幸せになってほしいですね。それによって企業も成長しますし、日本が元気になるので。

大月:ありがとうございます。質問は以上になります。

“採用ブランディング”に対するお二人の想いを伺えて大変興味深かったです。

また、採用のミスマッチをなくすために“採用ブランディング”が必要だという話は、人事のなかで常々言われてきたなかで、“具体的にどうすれば成功するのか?”というのを、事例を交えてまとめた『採用ブランディング』は大変面白い本だと思いました。

改めまして、本日は貴重なお話をありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。
今回は著者の佐藤さんと編集者の荻野さんをお招きし、これからの採用に必要な“採用ブランディング”についてお伺いして、ファシリテーターを大月が務めるという構成でお伝え致しました。

採用ブランディング
採用サイト・入社案内のコンテンツ&デザイン実例集
定価:本体 4,000円+税
発刊:ビー・エヌ・エヌ新社
リンク://www.bnn.co.jp/books/8288/

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(文:藤井翔太)

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