2020年06月23日(火) 更新

陸運業界とはどんな業界なのか|基本情報や現状と課題から見る将来性と今後の動向をピックアップ

就活生が思い浮かぶ陸運業界の企業は?

就活生の回答

キャリアパーク会員の就活生を対象に「陸運業界ときいて、具体的な企業名って出てきますか?」というアンケートを実施しました。まずは回答の一部をご覧ください。


  • カンガルー(西濃)

  • ヤマト運輸

  • 日本通運

■調査方法:キャリアパーク会員へのダイレクトメール
■調査日時:2017年3月7日
■調査元:ポート株式会社
■調査対象者:キャリアパーク会員の就活生
■質問内容:「陸運業界ときいて、具体的な企業名って出てきますか?」

陸運業界の企業についてい知っている企業があるかアンケートを取ったところ、宅急便サービスで有名なヤマト運輸や、世界的な美術作品などの搬送など、大口商品や貴重品の配送に定評のある日本通運などが挙がりました。そんな陸運業界の現状はいったいどうなっているのでしょうか。まずは将来性から確かめましょう。

陸運業界の基本情報

トラックを利用して「陸上」で運輸作業をおこなう

陸運業界に関する基本情報を確かめましょう。陸運とは「陸上運送」の略で、基本的にトラックを利用して貨物や荷物の輸送をおこなっています。日本トラック協会が毎年発表する「日本のトラック輸送産業-現状と課題-」によると、2014年にトラックを用いて輸送された貨物量は、約43億トンでした。これは、2014年における貨物全体の輸送量47億トンのうち91%をトラックによる輸送が占めており、陸運業界は物流にとって欠かせない存在だということがわかります。

個人向けの「小口」と企業向けの「大口」に分かれる

日本の陸運業界は、宅配便など個人向けの荷物を運ぶ「小口」と、企業向けに製品や製造前の原料、農作物や美術品など幅広い分野の貨物を扱う「大口」に分かれています。日本の主な陸運業界の企業を小口と大口に分けてみましょう。

日本の主な陸運業界の企業(小口)


  • ヤマトホールディングス
    「クロネコヤマト」で有名。宅配便シェア国内1位

  • SGホールディングス
    宅配便シェア国内2位の佐川急便を傘下に収めている

  • 日本郵便
    元々は官営企業だったが2007年に民営化。全国の郵便局ネットワークを強みに持つ

日本の主な陸運業界の企業(大口)


  • 日本通運
    経営規模としては日本最大級。幅広い事業を手掛け国際的な物流に力を入れている

  • 日立物流
    企業間の物流に強みを持つ。ここ数年は企業の物流子会社の買収を進めている

  • 福山通運
    広島県福山市が拠点。同じ広島の100円ショップ「ダイソー」の商品運搬で力をつける

  • セイノーホールディングス
    宅配便では取り扱われないサイズの荷物輸送に定評がある

市場規模は14兆円で約185万人が従事している

続いては、市場規模について見てみましょう。国土交通省の資料によると、2012年度の陸運業界の市場規模は14兆3,685億円です。また、先程紹介した日本トラック協会の報告書によると、約185万人がこの業界に従事しています。非常に規模が大きく、多くの従業員によって成り立っている業界であることがわかるでしょう。

陸運業界の現状と課題

EC取引の定着により小口荷物の増加が著しい

ここからは、陸運業界の現状と課題を見てみましょう。ここ数年、小口荷物の取扱量が急増しています日本トラック協会国土交通省によると、貨物の総輸送量自体は減少傾向にあるにもかかわらず、小口荷物の輸送件数は増加傾向が続きました。これは、ネット通販によるEC取引で小口輸送が活発になったのが原因です。平成17年度は約70万件だった小口荷物取扱数が、10年後の平成26年度には約90万件に増加しています。今後はますますEC取引が活発化すると見られていることから、小口荷物の輸送量は更に増えていくでしょう。

規制緩和で事業者数が急増し競争が激化

日本の陸運業界は、平成2年に実施された規制緩和の影響で競争が激化しています日本トラック協会の報告書によると、平成2年の規制緩和前の陸運事業者数は約4万社でした。しかし、規制緩和をきっかけに一気に事業者が急増した結果、現在は約6万社にまで増えています。この急激な事業者数の増加は過度な競争を促す結果となり、過積載配送の横行や無謀運転といった事案がみられるようになりました。

過剰な荷主・消費者ファーストでドライバーの負担が増加

陸運事業者の増加による競争の激化に伴い、様々なサービスが誕生しました。例えば、商品の配送料無料や時間指定配達、不在分の再配達といったサービスが挙げられます。しかし、それらのサービスは全て荷主・消費者ファーストの経営方針であり、ドライバーの負担が更に増加してしまいました弁護士ドットコムの記事によると、Amazonに代表されるようなEC取引による小口荷物の配送が急増したことに伴って、ドライバーは休憩時間が取れず残業続きといった状況に陥っています。

トラック輸送による環境への配慮が求められている

始めに紹介した通り、陸運業界は大半の貨物や荷物をトラックで輸送しています。しかし、トラックによる輸送が活発化した1960年代以降、排気ガスなどによる環境公害がクローズアップされたことから、環境への配慮が一段と厳しくなってきています。国による環境規制はもちろん、東京や神奈川などの一部地域では、多くのトラックが使用しているディーゼルエンジンの排ガス規制の強制化などが実施されました。陸運事業者は、環境に配慮したトラックの購入や改良など、新たな輸送コストが生じている状況です。

陸運業界の将来性と展望

大口輸送は「3PL」の推進で物流改革を進める

陸運業界の将来性と、展望について見てみましょう。大口輸送に関しては「3PL(サードパーティー・ロジスティクス)」の推進で物流改革を進めています。「3PL」とは、これまで運送や倉庫の管理などの業者が違っていた状況を改め、原料の運搬から商品の輸送・保管の全てまたは一部を1つの会社が賄う仕組みです。これにより荷主側は運送業者の契約を一元化できるほか、陸運事業者側は大口の顧客を確保するのが容易になるため、各社一斉にこの動きを進めています。

小口輸送は労働力確保のために週休3日制を導入

小口輸送に関しては、ドライバーの働き方改革が進むとみられています。SankeiBizによると、佐川急便はドライバーなどの労働力確保のために週休3日制を導入することを明らかにしました。この方針に対して宅配便シェア1位のヤマト運輸や、3位の日本郵便なども検討を進める構えを示しており、今後週休3日制が定着する可能性が考えられます。

宅配ボックスの推進や過剰サービスの排除で「労働者優先」の事業展開へ

レスポンスによると、過剰なサービスによるドライバーなど労働者の負担増加を防ぐために、ヤマト運輸は27年ぶりに基本運賃を値上げを決定し、[2017年10月より実施する]ことになりました。また、ドライバーの休憩時間確保のために、時間指定配達の一部取りやめも実施するなど、「利益優先」から「労働者優先」に方針転換を進めています。消費者側も対応を迫られており、宅配ボックスの推進で不在配達数を減らす取り組みが進むでしょう。

amazonなどのEC大手は自社配送にシフトする可能性

東洋経済オンラインによると、ヤマト運輸の輸送運賃値上げの決定により、amazonなどのEC大手は自社配送へと経営戦略をシフトする動きをみせています。とくに海外のamazonですでに実行されているこの戦略は、生鮮食品を取り扱うAmazonフレッシュの開始とともに日本でも導入されています。注文から配送まですべて自社で賄うことで、利益の確保と陸運業界の各企業への攻勢を強める意図があるでしょう。

モーダルシフトや石油以外の燃料を試用したCO2削減が進む

環境への配慮が求められることから、国土交通省はモーダルシフトと呼ばれる、トラック輸送の一部を鉄道やその他の方法に変更する仕組みを導入したり、小口荷物の配達には自転車等を利用したりするなど、トラックだけに頼らない輸送形態を推進しています。陸運事業者も環境への配慮を打ち出すために、天然ガスやハイブリッドなど、石油だけに頼らない燃料を使用したトラックの台数を増やすことでCO2削減を図っています

IoTの導入やETC2.0の活用により効率的な貨物輸送の実現へ

インターネットの活用(IoT)や、高速道路の料金所に設置されているETC2.0の導入も注目すべき動きでしょう。例えば、ETC2.0の導入により、高速道路の状況確認や渋滞回避情報の収集が可能となります。これらの技術は、物流環境の効率化やリアルタイムでの輸送確認体制を構築するために欠かせないツールとなりそうです。

業界の事をもっと知る為の業界研究マニュアル

物流業界で働きたいという就活生は、仕組みや各企業について把握することが大切です。業績推移や各社の強みを知っておくことで、「この企業でなければならない」という入社意欲を志望動機に反映させることができるでしょう。そこでおすすめなのが「運輸業界大研究Book」です。海運、陸運、倉庫の業態別に主要企業などを紹介しています。無料でダウンロードできるため、効率的に業界・企業研究を進めたい就活生におすすめです。

陸運業界は物流の一本化と労働者優先の事業形態に方針転換が進む

陸運業界の将来性や今後の展望などについてご紹介しました。陸運業界は約14兆円の規模を誇る大きな市場です。ここ数年は、ネット通販の利用者数増加によりその需要を高めています。しかし、その影響でドライバーの負担が増えていることが問題になっているのも事実です。今後は「3PL」の導入や週休3日制の推進など、企業、ドライバーそれぞれに負担がかからないようにするための環境改善が進むでしょう。

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