AnyMind Group(エニーマインド・グループ)

十河宏輔(現CEO)と小堤音彦(現COO)が2016年、マーケティングを支援する会社としてシンガポールで創業。「誰もがビジネスに熱狂する世界を創る」をコーポレートパーパスに掲げ、マーケティングを軸にサプライチェーンの支援もおこなう幅広い事業を展開している。インフルエンサーの影響力やフォロワーの分析からインフルエンサー施策の実施・効果測定までができる「AnyTag」をはじめ、9つのプラットフォームを開発している。社員は1,300人に上り、事業は日本やタイなどアジアを中心に13カ国・地域で展開している。2023年3月に東証グロース市場上場企業詳細:コーポレートサイトサービスサイト

デジタル化で、世界の「ビジネスインフラ」を目指す会社

AnyMind Groupは生産・EC構築・マーケティング・物流などをワンストップで支援するプラットフォームとサービスを提供する会社です。事業は企業や個人のインフルエンサー、クリエイターを対象に、日本やタイ、UAE(アラブ首長国連邦)など13カ国・地域で展開しています。事業の特徴は幅の広さにあります。Webマーケティングを軸に、生産から商品を届けるまでの全ての面で支援ができる体制を整えています。幅広い事業を可能にしているのが、自社で開発した9つのプラットフォームです。さまざまなビジネスシーンにおけるデータを分析しながら、顧客の要望に応じた支援を可能にしています。ではどんな思いや考えから、幅広い事業を世界で展開することになったのでしょうか。「時代に必要なものを考え提供してきた結果です」と語るのは、AnyMind Group人事最高責任者(Managing Director, Human Resources)の水谷健彦さん。現在の事業だけを発展させていこうとしているわけではなく、M&A(合併・買収)も積極的におこないながら、事業内容や国、地域についても展開を考えているとのことです。多岐にわたる事業内容を紐解き、今後の世界を見すえた方針についても伺っていきました。

編集部が注目する3つの数字

編集部は今回、AnyMind Groupに関する数字に注目してみました。

①売上高247億円

創業7期目の2022年の売上高は、過去最高を更新する約247億円を記録しています。7期目の売上高は、Alibaba Group(204億円・2006年)、楽天(180.8億円・2003年)などをしのぐとのこと。急成長を続けているのがわかります。

②売上高の海外比率53%

2022年の売上高のうち、海外比率が53%を占めています。AnyMind Groupは日本だけではなく、創業地のシンガポール、インドネシア、ベトナム、タイ、香港など13カ国・地域で事業を展開しているため、その成果が現れています。売上高の海外比率が高いことが大きな特徴の一つといえます

③従業員の海外比率72%

全約1,300人の従業員のうち、日本以外の外国籍の社員が72%も占めています。人数が多い順で、タイ、ベトナム、インドネシア、インドなど。今後も海外の進出にともない、外国籍のスタッフが増える可能性は高いです。

事業内容

Q.事業概要を教えてください

事業展開が広いことが特徴です。1つずつ説明していきます。事業は大きく分けて、ブランドコマースとパートナーグロースに分かれます。まずは、ブランドコマースから説明しますね。顧客はブランドを持っている個人や企業です。マーケティングの支援を軸に、顧客の要望に応じて商品の企画や生産、ECサイトの構築や運営、物流の管理やカスタマーサポートなどをおこないます。

たとえば、マーケティング支援ではInstagramやYouTube、TikTokなどを使って活動するインフルエンサーや企業をサポートします。みなさんも、好きなYouTuberが「企業案件です」と話して商品を紹介している動画を見たことはないでしょうか。私たちは、インフルエンサーや企業が顧客に対し、情報や商品などを、どのようにして届けるかという部分をサポートしています。マーケティング以外の部分でも、作りたい商品を作れる工場を探したり、販売をする際に使うサイトの立ち上げ、顧客に届けるまでの在庫や物流の管理もおこなっています次に、パートナーグロースを説明します。

顧客はメディア・アプリを運営するパブリッシャーやSNSアカウントを持つクリエイターです。ちなみにメディアとはWebメディアやスマートフォンなどのアプリを指しています。パブリッシャーに向けては、使いやすいUI/UXのWebサイトやスマートフォンアプリ設計をおこない、PV数を上げたり、広告収入を増やしたりするための支援をしています。メディアを見に来た人たちが快適で有益に感じ、メディアの価値が向上するようなサポートとなります。またクリエイターに向けてはコンテンツの収益化や各種配信、企業案件の獲得、独自のブランド・グッズ展開などを支援し、クリエイターの価値向上に向けた幅広いサービスを提供しています。いずれの分野でも、顧客への支援をするときに、自社で開発した9つのプラットフォームを使っています。横断的にデータを利用することで、マーケティングやサプライチェーンの中で、より効果的な施策や支援をすることができます

Q.開発したプラットフォームは具体的にどのような機能があるのでしょうか? 

各分野でのデータの分析をおこない、それをもとに提案をしていくことができます。たとえば、インフルエンサーマーケティングに使う「AnyTag」を紹介します。こちらのプラットフォームには、59万人を超えるインフルエンサーの情報が集まっています。インフルエンサーがどのような属性のフォロワーを抱え、過去にどのような仕事をしたかがわかります。フォロワーの情報は、年代や性別だけでなく、どんな時間によくこのインフルエンサーが見られているのかまでわかります。企業はAnyTagに集約されている情報をもとに、たとえば「20代女性にこの化粧品を届けるとしたら、どのインフルエンサーに宣伝をしてもらうか」ということを決めていきます。過去に同様の案件を実施したときの結果も残っているので、それらを参考にしながら弊社で支援をしていくことができるのです。今回はマーケティングのプラットフォームを紹介しましたが、商品の企画や生産、物流の管理、メディアの分析など、それぞれの事業に合わせた9つのプラットフォームになっています。これらのプラットフォームを世界13の国・地域の事業で利用しています。

Q.なぜアジアでビジネスをするのですか? 

アジアの成長に可能性を感じたからですね。市場として盛り上がると予想をしています。多くの人に見落とされがちなのですが、インドネシアが世界で4番目に人口が多いと知っていますか。中国とインドの人口はともに14億人以上で、世界で1位2位であることはご存じの人も多いと思います。ただ、インドネシアは人口が約2.7億人で世界4位です。ビジネスにおいて無視できない存在になっているのは明白です。インドネシアの平均年齢をみると、28歳と若いことも特徴です。日本は平均年齢が48歳です。人口の多さと平均年齢から見てもインドネシアを含め、アジアに可能性を感じています。

だからこそ、日本にとどまっているだけではもったいないと感じています。総人口や平均年齢をふまえ、弊社はインドネシアの企業のM&Aも発表し、2023年9月にクロージング予定です。これからも、ビジネスの市場として豊かなアジアの各国で事業を伸ばしていきたいと考えています。

Q.国ごとに事業内容は変わるのでしょうか? 

展開事業やマーケティングのノウハウ、プラットフォームの使い方は大きく変わりません。蓄積したノウハウをいろいろな国や地域に展開することができる点が、弊社の強みの一つです。ただし、事業を展開をしていくためには、共通したノウハウやプラットフォームだけでなく、国ごとのビジネス慣習やトレンドに合わせていくこともとても重要です。たとえば、日本ではAmazonや楽天市場、ZOZOTOWNなどの通販サイトを通して商品が購入できますが、ほかの国ではその国でよく使われている通販サイトがあります。出店するための規則や出店までに準備すべきもの、求められていること/ものなども異なります。そのために弊社では、現地スタッフの採用やM&Aをおこなうことで、国ごとのビジネス慣習を熟知した専門スタッフの配置に成功しています。また、展開済みの地域で獲得したノウハウを持った社員を現地に投入し、マネジメントをおこなうことで、国境を超えてビジネスのノウハウを蓄積・伝播させていく体制を整えています

このような体制が取れることで、国境を超えて商品を出したい人、自国での販路を広げたい人の支援を可能にし、ビジネスの障壁を取り除く手助けができていているのではないかと考えています。

現状、支援をしているYouTuberなどのクリエイターは1,400以上に上ります。また同じく支援するブランドは1,000以上、ウェブサイトやアプリなどのメディアを運営する事業者は1,500以上になっています。

競合・強み

Q.競合他社はどの企業になるのでしょうか? 

競合他社はいないと考えています。その理由は弊社のビジネスの幅の広さにあると考えています。事業ごとにマーケティング、商品企画、物流とみていけば競合はいます。ただ、マーケティングから物流までをワンストップで手がけている企業はほかを見てもいませんさらに、各事業でプラットフォームに蓄積されていくデータが、互いを補強しあい、強みになっています。たとえばインフルエンサーマーケティングであれば、インフルエンサーの抱えるフォロワーや企業と案件をしたときの実績がデータとして溜まっていきます。このデータはインフルエンサーの活動を支援するためだけではなく、企業が案件を依頼するインフルエンサーを決める際にも用いられたり、インフルエンサーが商品を作って売り出すときにも利用することができます。

事業の幅が広く関連性も高いので、現在提供しているプラットフォームにあるデータは、互いに重要な資料となります。さらに、13の国・地域で同じことがなされているため、国内だけではなく、企業が海外のインフルエンサーに案件を依頼をするときや、インフルエンサーが作った商品を他国へ売り出す際の指標としても使うことができます。そのため、競合を寄せつけない事業を展開することができます。

Q.M&Aを積極的におこなっているのはなぜでしょうか? 

M&Aは少し特殊で、売りたいと思っている会社を買うのではなく、売りに出てはいないが合併すると互いの事業が発展するような会社にこちらから声をかけています。互いの事業の補完性を説明し、一緒にアジアを代表する会社を作ることに共感を求めていく形です先日M&Aを発表したインドネシアの企業についても、大手との取り引きがあり、既に存在感のあるビジネスをおこなっていたものの、データの蓄積や分析はできていませんでした。そのため、弊社のプラットフォームを使いながらデータを蓄積し分析していくことが事業成長への大きなメリットになるのではないかと伝えることで、M&A合意につながりました。合併により互いのビジネスを発展させていきたいと考えているので、今後もM&Aを積極的におこなっていきます。

過去・現在・未来

Q.どのような経緯で会社を設立しましたか? 

創業者の十河は、もともとWebマーケティングを手がける会社で働いていました。グローバルな視点を持ち起業をしたので、創業地にはシンガポールを選びました。創業してすぐのころは、マーケティングの支援のみをおこなっていましたが、マーケティングだけでは顧客の全ての問題解決はできないと考えるように。売れる商品を作るにはどうしたらいいか、商品を届けるための販売サイトはどのようなものが最適なのか。そう考えていくことによって、商品の企画や生産、ECサイトの構築や運用など幅広い事業へと展開するようになりました顧客のビジネスにとって障壁となっているものを解決しようと、歩みを進め続けたことが今の幅広い事業につながっています。十河に趣味を聞いたとしたら、「仕事」と返ってくると思います。十河は純粋に、良いサービスを作り、それを必要としている人のもとに届き、広まっていくことを楽しいと感じています。そのため、ある意味では事業にこだわらず、ビジネスで障壁を取り払いたい、もっと良くしていきたいとの思いで歩みを進めていった結果の、今だと考えています。

Q.現在の課題はなんでしょうか? 

現状の課題は、展開している事業が国や地域によってばらつきがあることです。プラットフォームを使ったデータ分析や、マーケティングについてはあまりばらつきがありません。ただ、メディアを持つ企業や動画を作るクリエイターへの支援については、国や地域によってメディアやYouTuberの多さにもばらつきがあるため、事業としても広がりきっていないことがあります。また、ECサイトや物流に関しては比較的新しい事業で、これから展開できる部分も多くあると思っています。事業のムラをなくすことでさらなる事業成長を目指していきますまた、本質的な課題としては事業の伸びに対して人材が足りていないと考えています。求める人材の専門性が高いことが要因として挙げられるでしょう。ただ、もちろん専門性が高い人材が集まることも好ましいですが、これから高い専門性を得ていく意欲のある人・自己成長に強いこだわりを持っている人とも一緒にこの世界への挑戦をおこなっていきたいですね。

Q.今後集まってほしい人材について詳しく教えてください。

会社の目的である「誰もがビジネスに熱狂できる世界を創る」ということを実現するためには、日本で働くだけではもったいないと感じ、常に挑戦と成長を求めているような人材が適していると考えています私たちは、事業というものは時代に即して変わっていくものだと考えています。たとえば、インフルエンサーマーケティングは10年前にはありませんでした。30年後も同じ事業をしているとは考えにくいと思っています。時代に合った必要な事業を展開するために、どのような事業に対しても挑戦することができ、自分の成長にこだわっていく人材に集まって欲しいと考えています。

水谷 健彦 さん(AnyMind Group CHRO)水谷 健彦 さん(AnyMind Group CHRO)
水谷 健彦 さん(AnyMind Group CHRO)

Takehiko Mizutani•1995年リクルートに新卒入社。その後2001年リンクアンドモチベーション入社を経て、2013年にJAMを設立。2017年にPKSHA Technology社外取締役就任。2021年よりAnyMind JapanのCHRO(最高人事責任者)に就任。そしてAnyMind Group HR全体のマネージングディレクターに就任し、現職