Micoworks(ミコワークス)

2017年に大阪で創業、2019年に社名をMicoworksに変更した。人材系事業を段階的に譲渡し、2021年にはサービスを「MicoCloud(ミコクラウド)」に一本化。企業のミッションに「Empower every brand for the better future(ブランドの提供価値を最大化し、あらゆるビジネスの可能性を広げ、ブランドと生活者がもっと豊かになる未来を創造する)」を掲げマーケティングSaaS領域で事業展開している。LINEを活用したマーケティングプラットフォーム「MicoCloud」と、飲食店などを対象にリピーター施策を自動運用するLINEミニアプリサービス「ミコミー」の2プロダクトを展開。社員数は165名。事業拠点は大阪、東京、福岡のほかフィリピンのマニラにも事務所を開設している企業詳細:コーポレートサイトMicoCloudサービスサイト

オンラインマーケティングの革新を目指す会社

Micoworksは、企業とその顧客のコミュニケーションを改革し、企業の事業成長を支える事業を手助けする仕事をしています。LINEを中心としたなどのSNSを使ったマーケティングを支援し、企業へのファンを増やして売り上げ拡大に貢献するのが目的です。現在この分野では個人情報に関する新たな規制が設けられたり、AI(人工知能)などのテクノロジーが急速に進化したりするなど、変革のタイミングを迎えています。その中で、Micoworksはいち早くLINEという身近なアプリを活用してパーソナライズしたマーケティングLINEを活用したマーケティングの手法を確立し、新しい挑戦を始めています「変化する環境のもとで、Micoworksは最新のオンラインマーケティング手法を開発・提供することにより、多くの企業に貢献できると確信しています」と語るのはMicoworksの人財戦略部(採用・カルチャーチーム マネージャー)の徳永綾乃さんです。当面の目標は2030年までに、この業界でアジアNo.1になること。その先には本格的なグローバル展開も見据えるMicoworksの現在とこれからについて伺っていきましょう。

編集部が注目する3つの数字

編集部は今回、Micoworksに関する数字に注目してみました。

●累計資金調達額約63億円

2023年12月に約35億円の新たな資金調達を実施しました。これまでに調達している約28億円とあわせ、調達額は約63億円に達しています。12月の調達では中心的な投資家として、シンガポールの政府系投資会社の傘下に連なるVertex Growth社が参画しました。この会社は事業内容や成長性を精査し厳選した企業にしか投資しないことで知られ、同社から投資を受けたことで有望性がうかがえますまた、Vertex Growth社が投資した企業のうち、約3割がユニコーン企業に成長しているそうです。そんな投資会社が日本国内で投資したのはMicoworksが2社目で、注目度の高さが伺い知れます。

●エンドユーザー数2,900万人

Micoworksの主力プロダクトであるMicoCloudは、東京海上日動火災保険、パソナ、JR東海ツアーズ、BASE FOOD、マイナビなど、大手BtoC企業を中心に1,000ブランド以上が導入しています
これらブランドのエンドユーザー数を合計すると、日本の人口の約4分の1に相当する2,900万人に達するとのことです。

●利用企業継続率99%超

MicoCloudを導入した企業が翌月もサービス利用を継続する割合は99%以上にのぼっています。導入ブランド数とエンドユーザー数の両方を拡大しながらこの高い継続率を維持し続けているところに、事業の強みが表れています

事業内容

Q.事業概要を教えてください。

簡単に言うと、企業と顧客のコミュニケーションを最適化することで、企業の事業成長を支援する事業です。BtoCブランドの顧客コミュニケーションを支援するためのプラットフォームを開発、提供するほか、コンサルタントによるマーケティングに関する分析や提案をおこなっています学生のみなさんもLINEをよく使うと思いますが、当社のサービスはおもにLINEを使ったマーケティングの支援です。当社が企画・開発しているMicoCloudとLINEを連携させると、企業はマーケティングに関する数値を分析でき、商品やサービスをより多くの人に届けるためにさまざまな機能を使うことができます。たとえば、企業が運用するLINE公式アカウントをMicoCloudで分析し、どのような属性の人が友だち登録をしているかがわかります。そのデータをもとに、友だち登録しているユーザーを増やすために、最適なプロモーションの仕方やタイミングなどを決めるということができるのです。またMicoCloudを利用することで、商品を買ったり、サービスを利用したりした人が会員登録する際、LINEにもともと登録されているデータを使うことが可能になります。それによって個人情報の入力といった煩雑な作業が省けるだけではなく、その後のマーケティングに活かせるデータが収集できるようにもなるのです。つまり、みなさんが街で買い物をしたときにLINEを使って会員登録をしたり、お気に入りの店からLINEにセール情報やイベント案内などが配信される裏側には、MicoCloudのサービスが関係しているかもしれません。現在の事業の柱は、当社でエンタープライズと呼んでいる「社員1,000人以上の大手企業」を対象に、LINEを活用したマーケティングをおこなうためのプラットフォーム「MicoCloud」を提供することです。

Q.もう一つサービスがあるとHPで見ましたが、どんなサービスですか?

飲食店をはじめとした中小企業向けの新しいプラットフォーム「ミコミー」のことですね。今後は顧客企業も大手企業中心から、より幅広い企業に広げていきたいと考えていて、その役目を果たしてくれるサービスになります。MicoCloudがエンタープライズを対象にしているのに対し、ミコミーは個人が営む飲食店向けのプロダクトです。LINEのミニアプリサービスで、パソコンがなくてもスマホだけで利用が可能な点が特徴になります。飲食店はミコミーを導入することで、自動的にリピーター獲得や常連顧客の育成を図れるのです。

ミコミーは、来店客がスマホのカメラでQRコードを読み取るだけでLINE会員化が完了し、デジタル会員証を発行できます。そのうえで来店ポイントを自動付与する機能を使い、来店回数で会員ランクがアップする仕組みも用意し、来店モチベーションの向上を図ります。また来店のお礼メッセージの配信、会員ランクごとの特典配布がおこなえるのも特徴です。

Q.時代に合ったサービスに感じました。

そうですね。新型コロナウイルス感染症の拡大以降、オンラインで商品購入をするのは当たり前になりました。Amazonや楽天などのインターネット通販を一度は使ったことがある人も多いのではないでしょうか。それらの通販はEコマースと呼ばれ、購入を考えている人が欲しいモノやサービスに関する情報を自らネットで探し、その情報を見て内容を評価し、購入するということを指します。店頭に並んでいるものを選んだり、店員から説明を受けて購入品を決めたりする形とは大きく異なりますよね。

そして今では、ユーザーが自ら検索して情報を取りにいかなくても、ほしいモノやサービスの情報が手元に届くスタイルが求められるようになりました。それに応じたマーケティング手法も開発されましたが、Cookie規制(※1)によって使いづらくなり、新たなスタイルが必要になったのです。そこで、LINEをはじめとするコミュニケーションアプリ上のチャットを使って企業がユーザーと対話しながら購買行動を引き出す手法に注目が集まっています。それがConversation(会話)に基づく新たな商品購入形態、つまりCコマース(※2)です。ユーザー一人ひとりにどのような情報提供をするのか、そしてユーザーからの質問や相談にその人に適した答えをどのように答えるのかが、企業ごとの工夫のしどころです。企業とユーザーのやり取りを最適にできるように、当社の2つのプラットフォームが活躍しています。

Q.Cコマース市場は今後、大きな成長を遂げそうですね。

Cコマースが進んでいるアジアの国々では、2025年にはCコマースでの購入額がEコマースを上回る見込みともいわれています。また2025年にはCコマースのグローバル市場は約32兆円規模まで膨らむとの試算もあるほどです私たちはその市場の第一人者として、プラットフォームを提供しながら、企業のマーケティングを支援していこうと思っています。

※1Cookie……ウェブサイトを訪れたユーザーの情報を一時的にブラウザーに保存する仕組み。このCookieを分析することでユーザーの足跡をたどることができ、広告配信などの利用されてきたが、現在はその利用が規制されている
※2 Cコマース……Conversational Commerceの略称で、MicoworksはこのCコマース分野で先陣を切る企業のひとつ。ちなみに「C-Commerce」はMIcoworksが考案して商標登録もしている単語

競合・強み

Q.競合他社はどの企業になるのでしょうか?

LINEを活用したマーケティングツールを提供する会社はいくつもあります。その意味では競合は少なからずありますね。ただし、その中でも私たちはCコマースという新領域における第一人者として先頭を走っている企業です。Cコマースという言葉自体も私たちの考案したもので商標登録も持っていますしね。オンラインマーケティングという分野で、新しいトレンドを創っていると自負していて、特に競合はいないととらえています

Q.Cコマースという領域で先陣を切っているということですね。そんな御社の事業の強みはどこだと考えていますか?

Micoworksは、プラットフォームを開発して提供するだけでなく、LINEを使ったマーケティングに関するコンサルティングから運用支援までワンストップで提供するという特徴があります。そこが大きな強みだと思っています。その強みができあがったのは、当社が事業をする目的が、顧客に自社プラットフォームを使ってもらうだけではなく、最終目標である売り上げ拡大まで達成するというところにあるからです。そのためには、新しい仕組みや課題の解決策を提供するだけでは不十分。企業の収益が向上したり、会社の評判が良くなったりといった結果が出せて初めて仕事ができたと考えているのです。この業界では、たとえばLINEの「友だち」を獲得したら1人あたりいくらの報酬といったビジネスモデルの会社も多いのですが、Micoworksは違います。もちろん「友だち登録」も増やしますがそれだけでなく、リピート率の向上やキャンセル率の減少といった顧客が設定する目標も一緒になって追い求めます。

Q.顧客満足度もかなり高そうですね。

そう言ってもらえてうれしいです。実際に、導入した企業から高い割合で当社のサービスを継続してもらっているのも、その証明になると思います。利用企業の月次継続率は99%以上で、同業他社からは「どうしてそんな高い満足度を引き出せるのか」と驚かれますね。もちろん簡単なことではありません。達成できた背景には、私たちが企業ミッション実現のために掲げている4つのMicoValueが関係すると思っていますその一つである「WOW THE CUSTOMER」は日本語で説明すると「お客様の真の課題に向き合い、成果で驚かせよう」となります。とにかく期待を上回る成果をあげて驚いてもらう。それくらいやり切るという精神が社内に根付いているのです。ただし、そこまでやり切るには担当者の力だけでなく、かかわるチームの全員、もっといえば直接的な関係がない部署も含めた全社員の総力を集めて取り組まなければ実現できません。そうした企業カルチャーを育ててきたことが、今につながっています。現在はおこなっていませんが、過去には全社員が月に1回はお客様との商談に同席し、それぞれの業務に活かす形で「WOW THE CUSTOMER」の浸透を図りました。部署を問わず全社員が商談を経験し、その経験を各部署で活かして少しでも顧客企業の満足につながる努力を積み重ねるのです。

Q.商談への同席を全社員に経験させるというのは聞いたことがありません。

営業系の社員はもちろんのこと、エンジニアやデータサイエンティスト、人事・経理などのバックオフィスの社員も同席しました。私も人事担当として入社しましたが、営業担当者と一緒に商談へ出向きました。会社の事業内容を頭では理解していても、顧客企業の話を直接聞いて、課題について説明する表情を見て、初めてわかることが沢山あることに気づきました。だからこそ顧客企業との接点での体験を共有することによって「WOW THE CUSTOMER」が地に足の付いたMicoValueになったのだと思います「WOW THE CUSTOMER」に関するエピソードとして、こんなこともありました。ミコミーの事業部長の話です。ミコミーが対象とする飲食店の実態を調べるうちに、もっと詳しくなおかつリアルな情報を知りたくなり、自らカフェでアルバイトを始めました。それで飲食業界のこと、また飲食店の店頭での顧客と店側との接点がどのようなものなのかを身をもって学んだのです。事業部長がそこまでするのは、やはり「WOW THE CUSTOMER」精神の賜物だと思います。

過去・現在・未来

Q.会社設立や事業の誕生にはどのような経緯があったのですか?

創業者で現在社長の山田が2017年に会社を興して最初に立ち上げたのは、新卒学生と企業のマッチングサービスでした。次いで約1年半後にMicoCloudの前身となったLINEマーケティングシステムをリリースし、2020年以降は徐々に事業をMicoCloudに絞り込みCコマース事業にまい進しています。

Q.現在は成長を加速させていくフェーズになるわけですね。

エンタープライズを対象とする市場ではMicoCloudで一定のシェアと地位を確立できました。これを成長の柱としています。ただし成長を支える柱が1本では物足りません。そこで期待しているのが、ミコミーをはじめとする新規プロダクトであり、複数事業を拡大させることによる企業成長を目指していますまた、MicoCloudについても、今後さらに顧客企業が増加していくのに伴い、最先端のテクノロジーを活用することで顧客企業の期待に応えられる体制作りに着手しようと考えています。生成AIをはじめとする技術力の強化にも投資し、テクノロジーによって提供できる「WOW THE CUSTOMER」を実現できるかどうか。これが私たちにとっての次なる挑戦となりますね。

Q.Micoworksの今後についても教えてください。

中長期ビジョンとして掲げている目標は「2030年までにアジアNo.1」を実現することです。最終的には世界を目指しますが、まずは人口増加にともない市場の拡大が著しいアジアでNo.1を確立する1位を獲ることから始めます。

そのため、アジア展開に向けて2024年から本格的に動き始めようと考えているのです。すでにマニラに拠点を設置しており、これから海外エンジニアの採用などを強化していくほか、台湾でもデータサイエンティストなどの採用をおこなっています。さらに遠い将来を見通せば、アジアNo.1の先には本格的なグローバル展開も視野に入れています。そのためにもCコマースが進んでいるアジアで必ずNo.1となり、グローバル化への足固めをしていきたいというのが当社の考えです。グローバル展開も見すえて、これまで以上にさまざまな能力を持った人材が数多く必要となります。そうした意味も含めて今後は新卒採用も強化していく方針です。活力と成長性に満ちたアジアで、そしてスケールの大きな夢を掛けられるグローバルで、活躍したいと考えている学生の方々をお待ちしています

徳永綾乃さん(人財戦略部 採用・カルチャーチーム マネージャー)徳永綾乃さん(人財戦略部 採用・カルチャーチーム マネージャー)
徳永綾乃さん(人財戦略部 採用・カルチャーチーム マネージャー)

AyanoTokunaga・大学卒業後、ファーストリテイリング入社。店舗マネジメントなどの経験を経て転職。IT系ベンチャーとテクノロジー系スタートアップで人事・採用や社内組織構築、広報などまで幅広い分野で活躍。2022年9月より現職