2020年07月31日(金) 更新
ステンレス業界の現状と今後の動向|企業研究に役立つ基礎情報や将来性なども紹介
目次
金属業界の企業へ応募予定の就活生は少なくない
キャリアパーク会員の就活生を対象に「金属業界の企業へ応募をする予定がありますか?」というアンケートを実施しました。まずは回答の一部をご覧ください。
■調査元:ポート株式会社
■調査対象者:キャリアパーク会員の就活生
■質問内容:「金属業界の企業へ応募をする予定がありますか?」
金属業界といえば、就活生にも人気のある業界になります。就活生を対象にアンケートをしてみたところ、全体の4分の1にあたる約25%の人が「金属業界を志望している」と答えました。 こちらの記事では、金属業界の中でもステンレス鋼などを扱う、ステンレス業界の現状や今後の動向、抱えている課題について詳しく紹介します。
ステンレス業界の基本情報
ステンレス鋼は「錆びにくい」鋼を表す
ステンレス業界の基本情報からみてみましょう。まずはステンレスとは何かについて紹介します。ステンレス(stainless)は直訳すると、「錆びない・汚れない」という意味です。鉄にクロムと呼ばれる物質を配合することで、錆びにくくした金属のことをステンレス鋼といいます。では、ステンレス業界はどういった産業が中心となっているのでしょうか。
ステンレス鋼の製造・加工・販売をおこなう
ステンレス業界の主な産業は、ステンレス鋼の製造や用途に合わせた加工販売が中心です。製造されたステンレス鋼の用途は様々なものがあります。家庭用なら、水を使ったり触れたりする機会の多いキッチン用品、洗濯機や冷蔵庫などが挙げられます。工業用なら、建築物・鉄道車両・煙突など、長期間の使用を前提とする製品に用いられることが多いです。
ステンレスが用いられる主な業界とその用途
日本治金工業のホームページより
- 「建築」:屋根やエレベーター・エスカレーター、ドアノブなど
- 「土木」:道路標識や貯水槽、水道橋、プールなど
- 「家電」:洗濯機、電気食器洗浄機、炊飯器など
- 「厨房」:スプーン、ナイフ、流し台など
- 「輸送機器」:鉄道車両(外板・手すり)、自転車(フレーム・ディスクブレーキ)など
- 「精密機器」:IT用機器(ハードディスクケース他)、カメラボディ・時計部品など
- 「産業機器」:化学プラント、ビール貯蔵タンク、原子力発電など
- 「家庭用品」:灰皿、郵便受箱、物干し竿、はさみなど
- 「レジャー」:すべり台、ゴルフ用品、釣道具など
新日鐵住金ステンレス・日本治金工業などが有名
日常生活に欠かせないステンレスを生産する、日本の主な企業を見てみましょう。ステンレス業界には、大小様々なメーカーが存在しますが、大手として扱われるのは主に3社です。1925年創業の老舗メーカーである日本治金工業、表面処理の高さに定評のある日新製鋼、総合ステンレスメーカーとしては日本最大手の新日鐵住金ステンレスが該当します。他にも、独自規格のステンレス製品を製造するJFEスチールなども、大手企業として扱われることがあります。
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ステンレス業界の現状と課題
日本国内のステンレス鋼生産量は年々減少傾向
ステンレス業界の現状と課題を見てみましょう。まず、日本国内のステンレス鋼生産量は年々減少傾向です。ステンレス協会によると、日本におけるステンレス鋼の生産量は、2004年に400万トン近くにまで上昇していました。しかし、リーマンショックによる景気の悪化をきっかけに生産量が減少し、現在は300万トン前後まで落ち込んでいます。その結果、2016年の国別生産量は、インドに逆転されて3位に転落したのです。
海外企業の躍進で苦戦を強いられている
日本のステンレス業界は、海外企業の躍進で苦戦を強いられています。東洋経済オンラインによると、日本のステンレス鋼メーカーは技術力に強みを持つものの、生産量という観点では海外メーカーに遅れを取っているのが現状です。例えば生産量1位を誇る中国の太源鋼鉄の自社生産能力は、日本のステンレス業界全体の年間生産量と匹敵しています。日本のステンレスメーカーは、このような状況下で激しい競争にさらされています。
過剰供給で採算が合わない状況が続いていた
ステンレス協会によると、世界のステンレス鋼生産量は毎年伸びを見せています。その原因となっているのが中国の存在です。産業新聞によると、中国は毎年ステンレス鋼の生産量を増加させています。その結果、過剰供給に陥り、ステンレス鋼の販売価格を下落させてしまいました。さらに追い打ちをかけるように、原料となるクロムの価格が急激に高騰したことで、粗利率が悪化して採算が合わない状況に陥ったのです。国内の生産量が減少したのは、景気悪化はもちろん、過剰供給を抑えるためであったともいえます。
ステンレス業界の動向・将来性
ステンレスの需要拡大に伴って生産量拡大のチャンス
ステンレス業界の動向や、将来性について確かめましょう。世界的には過剰供給気味だったステンレス鋼ですが、国内の需要は伸びしろがあるとみられています。2020年に開催される東京オリンピックに向けた建材部品の供給のほか、老朽化した施設や公共設備のメンテナンスなどで用いられるためです。急激な景気悪化の可能性もあるため予断は許さないものの、チャンスは十分に存在します。
ステンレス鋼の価格上昇で収益改善の見込み
先程も紹介していた通り、ステンレス鋼は供給過剰などの影響で、卸売価格の下落が続いていました。しかし、2016年は国内需要の伸びもあり、その価格が徐々に上昇しています。日本経済新聞によると、2016年11月はステンレス鋼板の卸売単価が2年半ぶりに上昇に転じました。また、生産量調整と高品質な製品の販売を強化したことも幸いして、大手各社の業績は徐々に回復しています。産業新聞によると、2016年の4月から12月期の決算において、大手3社のうち2社が営業増益を記録しました。
企業の合併や海外企業との合弁で盤石化を図っていく
ステンレス業界は、今後企業の合併や海外企業との合弁が進むとみられています。日本経済新聞によると、新日鐵住金ステンレスの親会社である新日鐵住金が、ライバル企業だった日新製鋼を子会社化しました。これにより、新日鐵住金ステンレスと日新製鋼とを合わせた国内シェアは50%を超え、名実ともに日本最大級のステンレス鋼メーカーへと進化しています。海外との競争に勝ち抜くためには、足元を強化することが大事です。そのため、今後もこの流れが続くとみられています。
燃料電池やエコカーなどへの利用で新規需要の確保を狙う
ステンレス業界は、燃料電池やエコカー分野などの新規需要が注目を集めています。ここ数年、燃料電池を使用するエコカーや、リチウムイオン電池を使用するスマートフォンの普及が続いています。それらの耐久性を高めるためには、ステンレスが不可欠です。また、太陽電池パネルなど、需要増が見込まれる分野は他にもあります。日本のステンレスメーカーは、世界的に定評のある高品質なステンレス鋼を提供して、さらなる収益の確保を図るでしょう。
ステンレス業界の動向は海外企業の躍進で苦戦中!新規需要による収益確保を目指す
ステンレス業界の現状や今後の動向についてみてきました。建築物や精密機械のほか、キッチン用品など幅広い分野で用いられるのがステンレスです。この素材を生産し供給するステンレス業界は、ここ数年中国などの海外勢に押されていたほか、卸売価格の下落で収益減に陥っていました。しかし、国内需要の復調や高品質製品の積極展開により、業績は徐々に回復しています。今後は燃料電池やエコカーなど、環境分野にかかわる新規需要が見込まれるため、それらを軸に収益の増加を図るとみられます。
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