2020年06月23日(火) 更新

【フェルミ推定とは】出題業界の傾向から頻出例題までを完全解説!

フェルミ推定とは

調査困難な数量を論理的に導き出す

フェルミ推定とは、実際に調査するのも困難な数量を、限られた時間内で論理的に導き出すものです。欧米では科学的な思考力を育成する題材として、学校教育でも用いられています。

一方日本では、採用面接を中心に戦略系コンサルティングファームや外資系企業で用いられることが多いです。現代のビジネスシーンでは通例とされているので、覚えておきましょう。

フェルミ推定の練習問題を解いてみよう

明確な答えを求めないフェルミ推定は、いくつも問題が考えられます。考え方を知るためにいくつか問題をこなしていきましょう。そこで活用したいのがフェルミ推定問題集です。この問題集には、元外資系コンサルタントが作成したフェルミ推定の問題を掲載しています。無料でダウンロードできるので、問題の傾向や各問題の解き方について把握しておきましょう。

フェルミ推定で採用担当者が注目するポイント

思考力が試される

フェルミ推定を通して、採用担当者が見るポイント1つ目が、思考力です。フェルミ推定を解くには、結果を導き出すためにどんな要因が必要なのかを洗い出し、順を追って組み立てるという作業が求められます。

企業は、フェルミ推定を解く過程から応募者が持っている知識を利用して考えることができるのかや、問題に対しての思考力が身についているかを見ているのです。

論理的思考は、ビジネスマンにとって必要不可欠なスキルであるといえます。つまり、ビジネスマンになるにあたり、最低限の思考を備えているかをフェルミ推定で試されているのです。

正確な回答は求められていない

フェルミ推定では、正解を求めるものではありません。正解があるわけではないのです。あくまでフェルミ推定で見られるのは、考え方です。

そのため、解答を導き出す際にも、考えるのは正しい答えではなく、どうすれば回答をだすことができるのかというロジックです。

発想

採用担当者が注目するのは、考え方の次に発想力です。回答を導くために、どのような切り口で持っていくかが必要です。

例えば、日本の結婚式場の数を求める際に、男女比率なのか、婚姻率からアプローチするのか、市場の売上から求めるのか、どんな切り口からアプローチすれば答えを求められるのか、その発想についても採用担当者は注目しているのです。

コミュニケーション能力

就活でフェルミ推定が出される際、1人で考えることもありますが、グループワークで回答を求めるケースも多いです。

その際に、他のメンバーとのコミュニケーションも採用担当者が注目するポイントです。いろんな意見が出るときは、複数ある意見にどう対応するか、全く意見がでない場合の対応、意見がぶつかった時の対応など、対人コミュニケーションも見られるのが、フェルミ推定です。

フェルミ推定が出題されやすい業界

コンサルティングファーム・投資銀行

フェルミ推定は論理的思考力を鍛える強力な方法のひとつであるため、外資系企業ではよく出題される傾向にあります。また、コンサルティングファームや投資銀行の業務で実際に役立てることができるため、これらを志望する学生にとってフェルミ推定の試験は必須ともいえるでしょう。

コンサルティングファームでフェルミ推定が重視される理由

コンサルタントの業務とは、企業をはじめとするクライアントが抱える問題を解決していくことです。クライアントの問題を解決するコンサルタントには思考力が必要になります

フェルミ推定は、コンサルタントとして必要とされる論理思考力や仮説構築力、ビジネスセンス、計算のスピードなどの基礎的な能力を見極めるのにもってこいの問題なのです。

投資銀行でフェルミ推定が重視される理由

コンサルティングファームだけでなく、投資銀行の選考でもフェルミ推定が重視されます。志望する部署にもよりますが、業務の中で最もフェルミ推定力 が必要とされているのが、IBD 部門です。
IBD 部門は、企業の M&A や資金調達の提案をしていく、「財務のコンサルタント」です。
この業務で必要となるのが思考力と提案力です。この力を測るために、フェルミ推定が重視されるのです。

フェルミ推定の効果的な対策とは

「フェルミ推定に正解はない」と理解して取り組む

フェルミ推定の時に重要な点は、「いかに自分なりの思考が出来るか」「自信を持って考えられるか」です。答えの正確性ばかりにとらわれず、目の前の課題に対して疑問を持ちましょう。

そして、その疑問を解決するために何故そう考えたのかを、論理的にしっかり組み立てて、答えを導いてください。それには、柔軟な読解力を持つ必要があります。

疑問を解決するための考え方がフェルミ推定の評価ポイントなので、たとえ正解が間違っていても、さまざまな認識で多角的に物事を見れる人物として評価されるのでしょう。

推定する“根拠”となる確実な数値を知っておこう

就活でフェルミ推定の問題と向き合う際、推定する“根拠”となる確実な数値を知っているかどうかが重要です。

最低限のデータを把握しておくだけでも、ライバルに大きな差をつけられるでしょう。自分が志望している企業で「フェルミ推定」が出題されるという情報を掴んだら、必ず基本的な数値は把握しておいてください。

フェルミ推定に役立つ基本的な数値&公式

フェルミ推定で役立つ数値~日本編~

明日への統計2017政府統計の総合窓口を参考に、数値をまとめました。

フェルミ推定で覚えておきたい数値 ~日本編~

【人口】1億2,709万人
【総人口に占める子ども(15 歳未満)の割合】12.6%
【高齢者(65歳以上)】3,461 万人
【市町村】1,719箇所
【一般世帯数】5333 万世帯
【住宅】6,063万戸
【空き家】820万戸
【就業者数】6,465万人
【小学校】20,095校
【中学校】10,325校
【高校】4,907校
【短期大学】337校
【大学】780校

人口は押さえておくべき数値です。しっかりチェックしておきましょう。

フェルミ推定で役立つ数値~世界編~

世界のさまざまなデータについても、世界の統計2017世界と日本のデータを見るを参考にご紹介していきます。

フェルミ推定で覚えておきたい数値 ~世界編~

【人口】73億4,900万人
【陸地総面積】136,162,000 km2
【国】196ヵ国
【国連加盟国】193ヵ国
【中国の人口】13億7,600万人
【アメリカ合衆国の人口】3億2,180万人

この他にも、主要国の人口はチェックしておいたほうがよいでしょう。

フェルミ推定では「公式・単位」もポイントになる

基本的な公式や単位もおさえておきましょう。日常的にも使える知識ですので、覚えておいて損はありません。

単位の換算

■長さ
1m=100cm
1cm=1/100m
1mm=1/1000m
1km=1,000m
■質量
1kg=1,000g
1g=1/1,000kg
1t=1,000kg

1L=1,000cm3

1m3=1,000L

容積の単位は、日頃使うことのないものもあるので、しっかりチェックしておきましょう。

公式

密度=(単位体積の質量)=(質量)/(体積)
速度=(単位時間に進む距離)=(距離)/(時間)
円周=半径×2×円周率
円の面積=半径×半径×円周率
球の表面積=同じ半径の円の面積×4
球の体積=表面積×半径×1/3

中学程度の数学で出てくる公式です。とくに速度の公式は、SPIなどの試験問題を解くときにも用いますので、覚えておいてください。

フェルミ推定の解き方と例題

フェルミ推定の解くためのステップ

フェルミ推定の解き方にコツはあるのでしょうか。フェルミ推定を解くには、次の 5 つのステップをおさえて問題に取り掛かるのがいいとされています。

フェルミ推定を解くための 5 つのステップ

①前提確認:求めるものの定義を決めて、必要な条件を洗い出す
②アプローチ設定:何をベースに推定を進めていくのかを明確にする
③モデル分解:アプローチ設定で決めた内容を分解していく
④計算実行:これまでのステップを計算していく
⑤現実性検証:推定するのに設定した計算式や数の正しさをチェックする

以下に例題を紹介します。フェルミ推定の対策として活用してみてください。

【例題①: 日本にある電柱の数は?】
①前提確認
 電柱は単位面積当たりの本数が決まっていると仮定する
②アプローチ設定
 住宅の密集する市街地と山間部を含む郊外では、電柱の密度が大きく違うので、単位面積当たりの本数をこれら2つに分けて算出し、合算することで日本の電柱の総本数とする
③モデル分解
 市街地では電柱の間隔は50mに1本、郊外では200mに1本配置されているとすると、1平方キロメートル当たり市街地では400本、郊外では25本電柱があることになる。この二つの数値をモデルとする。
④計算実行
 市街地、郊外各々の総面積を算出する。
 ・日本の総面積は約38万平方キロメートル
 ・日本の国上の4分の3が山間部といわれているので、日本の2割程度が市街地と想定
 ・よって市街地、郊外それぞれの電柱の数は、
  (日本の総面積)×(各々の占有率)×(1平方キロメートル当たりの本数)から、
   市街地:38万×0.2×400=3040万(本)
   郊外:38×0.8×25=760万(本)
したがって総本数は、計3800万本と算出できる。
⑤現実性検証
 電柱の本数は、電力会社とNTT が公開している数字によると約3300万本である。

【例題②: 日本全国のマンホールの数は?】
①前提確認
 日本国内の平地にあるマンホールに限定する
②アプローチ設定
 マンホールは平地に画一的に存在するため、面積をベースに考える
(全国のマンホールの数)を求める計算式は、(日本国内の平地面積)÷(マンホール一個の占める面積)
③モデル分解
・日本国内の平地面積を求める
  全国の面積は約 38 万㎢
  →マンホールは平地に存在すると仮定
  →山地 1/4、平地 3/4 と仮定して、平地面積は 28.5 万平方キロメートル
・マンホール一個の占める面積を求める
 →マンホールは 20m ごとに一つだと仮定(実感ベース)して、20×20=400 平方メートル
④計算実行
(全国のマンホール数)= 28.5 万平方キロメートル÷400 平方メートル                   = 28.5 万 ×1,000×1,000 平方メートル÷400 平方メートル
           = 7.125 万 ×10,000
           = 71,250 万個
⑤現実性検証
 ↓
解: 71,250 万個

【例題③:日本で使用されているエアコンの台数は?】
①前提確認
 世帯全てにエアコンがあるとする
②アプローチ設定
 日本で使用されている家庭用エアコンの台数を世帯ベースで考える
 (家庭用エアコンの台数)=(世帯数)×(一世帯の平均所有台数)
③モデル分解
(世帯数)
・全ての人口がある世帯に属すると仮定。また、ほとんどの世帯が小世帯 =3 人、中世帯 =4 人、大世帯=5 人に収束するとし、かつ各々の世帯数が同じ割合で存在すると仮定する
・日本の一世帯の平均人数は 4 人
・よって世帯数は 120 百万人(日本の総人口)÷4 人=30 百万世帯
(一世帯の平均所有台数)
・小世帯のエアコン所有台数が 3 台(ダイニング、夫婦寝室、子供部屋にそれぞれ1台ずつ)と仮定し、同様に中世帯が4台、大世帯が 5 台所有しているとすると、一世帯の平均所有台数は 、
 (3+4+5)÷3=4 台
④計算実行
 30 百万(世帯) ×4(台)=120 百万台
⑤現実性検証

解:120 百万台(1億2000万台)

フェルミ推定の例題と解き方

例題を元にフェルミ推定独特の思考法に慣れていきましょう。フェルミ推定の解き方にはパターンがあるため、例題を複数こなしてコツをつかめば、大抵の問題には対処できるようになります。

キャリアパークでは、フェルミ推定の解き方に着目して細かく解説した「フェルミ推定対策」を作成しました。

これを使ってフェルミ推定の解き方のコツやポイントを理解したら、あとはどれだけ解き方に慣れるかがポイントです。実際にフェルミ推定をどんどん解いて慣れるようにしましょう。

フェルミ推定のおすすめ書籍4選

フェルミ推定問題集全25問(無料)

■発行元:キャリアパーク

主に外資やコンサル会社の入社に必要な「フェルミ推定」。このフェルミ推定問題集は実力が身につく例題を25問があります。

フェルミ推定はパターンさえ覚えてしまえば誰でもできるので、例題をとにかく解くことが習得への近道です。無料でダウンロードできるので、用意されている25問を何度も繰り返してパターンを覚えましょう。

現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート――「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!

■東大ケーススタディ研究会 (著)
■発行年月:2009年9月18日

本書は、数々のフェルミ推定の問題を解いてトップ外資系企業に内定した東大生たちが、そのパターンと解法のステップをわかりやすく解説したものです。さらに厳選された30の例題も掲載しています。とくに、もっとも難易度の高い「解答のとっかかり」を体系化してありますので、だれもが気軽にフェルミ推定問題に取り組めるようになっています。フェルミ推定対策に一度読んでおいて損はない一冊です。

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

■細谷 功 (著)
■発行年月:2007年12月7日

本書は、季刊『Think!』2007年春号に掲載された「フェルミ推定で鍛える地頭力」をもとに全面的に書き下ろしたものです。本書では、「考える力」のベースとなる知的能力を「地頭力(じあたまりょく)」と定義し、「フェルミ推定」のプロセスを「日本全国に電柱は何本あるか?」といった例題やその解答例から紹介しています。
地頭力のベースである「好奇心」「論理的思考力」「直感力」と、それらの上に重なる仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの構成要素について解説した上で、その鍛え方も記載されており、論理的思考を身につける上で参考にしたい一冊です。

過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題

■大石 哲之 (著)
■発行年月:2009年6月26日

外資系コンサル会社で実際に出題されている面接問題とその模範解答例が詳しく解説されており、地頭力を鍛えたい人におすすめです。本書では、「ケース面接」を擬似体験することができて、現役コンサルタントの思考プロセスを模擬解答例から知ることができるでしょう。自己啓発的な読み物として、外資系コンサル会社への就職・転職志望者や地頭力を鍛えたいビジネスパーソン、学生全般に役立つ一冊になっています。

数量を論理的に導き出すフェルミ推定は問題を解いて慣れるのがポイント

フェルミ推定とは、調査困難な数量を論理的に導き出すことをいいます。フェルミ推定は論理的思考を用いて解きますが、論理的思考には3つの技法があります。それぞれの考え方を十分把握しておいてください。

また、フェルミ推定の解き方にはパターンがありますので、多くの問題を解いて問題パターンや論理的な考え方に慣れておきましょう。

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