2022年02月17日(木) 更新

6ヶ月働き、3ヶ月休む!?という商船三井の海上職についてインタビューした

就活生の皆さんは「海上職」という仕事をご存じだろうか。海上職とは、海運業界(船で物資を運ぶ仕事)において、大型船舶に乗り、自らの手で運航するプロフェッショナルのことである。
日本の貿易量における海上輸送の割合は99.6%と言われ、輸送するものは石油や石炭、非金属鉱物、金属、セメント、化学薬品、自動車などの機械、生鮮食料品や日用品まで多岐にわたり、私たちの生活になくてはならない業界である。
今回は海上職の仕事について「就活当時は海運業界の存在すら知らなかった」という商船三井の社員にインタビューをした。就活のことから現在の仕事に至るまでをお聞きしたので、この記事を通じて海上職について理解を深めてもらえると幸いである。

<株式会社商船三井>
日本の三大海運会社の1社、連結純利益、連結売上高および時価総額で国内2位である。LNG輸送分野に強みを持つ。

<インタビュー対象者>
・佐竹 賢一(サタケ ケンイチ)さん/スマートシッピング推進部・スマートシップ運航チーム
※記事内容及び所属等は取材当時のものです。

海上職との出会い

――まずは海上職(自社養成コース)との出会いについて教えてください

就活時、私は化学やバイオといった分野を専攻している大学院に通う院生でした。一般的な院生の就活は、推薦等を経て、研究開発職などに就職することが多いのですが、ふとしたきっかけで参加した学内セミナーで、海上職(自社養成コース)に出会い興味を持ったのがきっかけです。

――そもそも佐竹さんはどのような軸で就活をしていたのでしょうか

自分自身が関わったモノやサービスを広く社会に拡散させ、それが社会貢献になるような仕事に関わりたいと考えておりました。具体的には食品業界や、インフラ業界を中心に就活をしていました。そんな中、世界中の様々なモノと人を繋げる海運という仕事に出会い、その仕事の魅力に徐々に惹かれていきました。
元々、海運という業界自体すら知らない状態で就活をスタートしていましたから、それが今の自分の仕事となっていることを振り返ると驚きですね。

――本選考時には海運業界大手3社の選考を受けたのでしょうか

当社を含め大手2社の選考を受けました。選考を受けなかった1社については、企業研究を十分にしていないと回答できないような内容でしたので、研究に軸足を置く院生の就活からすると難しく、選考を受けませんでした。

――佐竹さんが感じる商船三井の特徴はどのようなところにあると感じますか

個性が強いと感じます。特に私の同期は個性的なメンバーが多いので、そのように感じますね。良い意味で、どんな人でも活躍できる会社なのかなと思います。

――今、振り返ると佐竹さんの就活軸と海運の仕事はマッチしていたと感じますか

はい、マッチしていたと感じます。これまでの私はLNG船や、原油船といった船に乗る機会が多くありました。自分自身が運んだ天然ガスをガス会社さんに納品し、それを自宅で使っているというのは、感慨深いものがありますし、家族に説明するときも、「このガスはパパが運んだのだよ」という話も理解してもらえますし、日々の仕事にやりがいを感じています。

――一般的な就活生からすると、海上職という仕事を選択するには、一定のハードルがあると思うのですが、佐竹さんにはそういったことはありませんでしたか

そもそも海上職という存在自体を知らなかったので、そこが一つ大きな壁でしたね。なお、海上職という仕事を知ってからは、そこに自分のやりたいことがあるという軸の元に就活をしていたので、特段大きなハードルは感じませんでした。

話は変わりますが、大学選びの段階で海上職という仕事に就くために商船系の大学や高等専門学校を選択してきた方については、そのような早期の段階から将来を見据えて自分のキャリアを選択していることに尊敬の念を抱きました。

6ヶ月働き3ヶ月休むサイクル

――入社前後のギャップはありましたか

はい、ありました。想定していたよりもメリハリのある1年を過ごせるということですね。乗船期間と休暇の期間が明確に分かれているため、やるときはやる、休むときは休むというのが想像以上でした。
具体的な働き方でいうと、約6ヶ月間乗船し、約3ヶ月間休みというようなスケジュールとなります。例えば、1月から乗船した場合は、6月までが乗船期間となり、7月から9月までが休暇期間となります。その後、10月から3月までが、次の乗船期間となるようなイメージです。また、日本に寄港する周期も、乗船する船の種類によって異なります。3ヶ月サイクルの船もあれば、1ヶ月サイクルの船もあります。オーストラリアと日本を往復する船であれば、毎月日本に帰ってきたりしますね。日本に寄港しない船もあります。

――まとまった休暇が取れることのメリットとデメリットがあれば教えていただけますか

海外旅行や国内旅行を長期で出かけられるのは嬉しいですね。その一方、クリスマスや年末年始など特定のイベントごとに参加できなくなってしまうのは辛いですね。乗船のタイミングと休暇のタイミングが合えば、年末年始を自宅で過ごすことは可能ですが、それが噛み合わないと年末年始も乗船していることはあります。こればかりは仕事の関係上、どうしようもない部分がありますが、大きなライフイベントがある場合は、事前に伝えておけば調整をしてもらうことは可能です。ただ、まとまった休暇が取れるので、そこに合わせてライフイベントを設定するのが通常になりますね。

――しっかり働いてしっかり休む。まさにメリハリのある働き方ですね。続いて船上での過ごし方についてお伺いしたいのですが、そもそも船上ではスマートフォンは使えるのでしょうか。

衛星通信を使って各種インターネット通信をすることができます。ただ、回線スピードはそこまで早くないのですが、船上での通信環境については会社として改善する方針として取り組んでいます。船上でもYouTubeなど動画視聴ができるような時代になれば良いですね。

――船上での過ごし方はどのようにされているのでしょうか

映画を見たり、漫画や本を読んだりすることが多いですね。あとは、外国人と乗り合わせるため、船上でパーティするなどですね。通信が制限されているからこそできる楽しみを謳歌しています。また、コロナ禍以前は入港した際、「上陸」ができるので、限られた時間ではありますが、その国の食べ物や文化などに触れることができました。早くコロナ禍が収束して、以前のように上陸できる頃に戻れることを祈っています。

海上だけで働くだけが海上職ではない

――まさにグローバルで働くという感じですね。ちなみに他の海運系企業様と比べた時に働き方の違いはあるのでしょうか

おそらく、働き方の違いはあまりないと思います。ただ、力を入れている船の種類は異なりますので、乗船できる船に違いは出てくると思います。当社の場合、エネルギー部門に注力しているので、LNG船などに乗るケースも多くなりますね。話は少し変わってしまいますが、当社の海上職は陸上勤務をする機会も与えられます。私も今、スマートシッピング推進部というところで陸上勤務をしている最中です。

――陸上勤務をする機会はどのタイミングで訪れるのでしょうか

入社して5、6年程経過した頃に陸上勤務をするケースが多いですね。必ずしも陸上勤務がキャリアパスに入らない方もいるのですが、若手のうちに2年程度陸上勤務をして、海上の仕事に戻っていくのが当社の標準的なキャリアパスです。

――佐竹さんも今回の陸上勤務を経て海上勤務に戻るわけですね

そうですね。私は2021年の9月まで航海士として海上勤務をしていたのですが、休暇期間を経て、12月からスマートシッピング推進部という部門で陸上勤務をしています。おそらく2年程度、陸上勤務を経験した後に航海士としてまた海上勤務に戻ると思います。

――今所属されているスマートシッピング推進部とはどのような部署なのでしょうか

部としてはICT技術を利活用して、船の安全運航や、船員の労務低減などに繋がる取り組みをする部署です。部署のメンバーは、陸上職として営業を担当されてきた方や、造船業界出身の方など、様々なバックグラウンドを持つ方が集まってきています。
私がスマートシッピング推進部に配属された直後に部長から、「船上で感じていたことを忘れずにやりたいことやれよ」という風におっしゃっていただきました。そのため、私含め現場の船員が抱えていた課題や不満について取り組み、船上に戻る頃には改善できるといいなと思っています。
海上で仕事をして、その知識を活かし陸上勤務に取り組み、また海上に戻っていく。そういったサイクルを経て、理想的な職場環境に変えていけるといいですね。

自社養成コースと商船コースとは

――海上職は陸上職も経験でき、様々な仕事にチャレンジしたい方には魅力的かもしれないですね。佐竹さんは「自社養成コース」を経て海上勤務をされていますが、「自社養成コース」と「商船コース」はどのように異なるのでしょうか

自社養成コースは商船系の大学や高等専門学校を卒業していない方で海上職を志望されている方向けのコースです。入社後は2年間かけて、三級海技士の資格を取り、晴れて船員として働いていく形になります。

一方の商船コースは、入社してすぐに三級海技士を取得し、2ヶ月程度の研修を受けた後に乗船していくため、同期入社の自社養成コースのメンバーより早く現場経験を積むことができます。
また、海上職の魅力的なポイントは真にグローバルな環境で働けるという点ですね。陸上職は日々外国人とメールや電話を通じてやりとりすることは多く発生しますが、面と向かって仕事をする機会はそこまで多くありません。その一方、海上職の場合は船上に外国人が乗り合わせますし、諸外国を回る仕事ですから真にグローバルな環境で働けるといっても過言ではないでしょう。

――どのような人に海上職をオススメしたいか学生へのメッセージを頂戴できればと思います

オススメしたい人は、新しい世界に挑戦してみたい学生や普通とは異なるキャリアパスを望む学生にぜひ一考していただきたい職種だと思います。

昨今、コロナ禍で企業研究や会社の人を知る機会が減少していることと思います。しかしながら新卒での就職は人生で一回きりです。後悔のない就職ができるよう全力で取り組んでいただければ幸いです。

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