2020年06月29日(月) 更新

出版業界の今後はどうなるのか|「再販・委託制度」「電子出版」などから見る現状と将来性

日本の出版業界とは

「出版社・取次・書店」の3業態で成り立っている

日本の出版業界の構造について確かめていきましょう。出版業界では3つの業態で成り立っています。雑誌や書籍を作成する「出版社」、出版物を集めて各書店に配送する「取次」、出版物を消費者に販売する「書店」の3業態です。これら3業態の代表的な企業を紹介します。

日本の主な出版社

  • 小学館:「週刊少年サンデー」や「小学1年生」など若年層の雑誌に定評がある
  • 集英社:「週刊少年ジャンプ」や「Myojo」などヒット誌を擁する。1社単体での売上高は最大手
  • 講談社:「週刊少年マガジン」などのマンガ雑誌のほか「講談社文庫」などの書籍も有名
  • 新潮社:「週刊新潮」などの週刊誌や「新潮45」などの文芸雑誌が有名
  • KADOKAWA:ライトノベル作品やインターネット・映像作品とのメディアミックスで知られる

日本の主な取次企業

  • 日本出販:「日販」の略称で有名。オンライン書店を独自展開するなど多角化を図っている
  • トーハン:流通や取次でコンピュータ取引システムを先進的に導入した日販と並ぶ取次大手

日本の主な大手書店

  • 紀伊国屋書店:売上高では日本最大手の書店。国内にとどまらず海外進出も盛ん。
  • 丸善CHIホールディングス:「ジュンク堂書店」や図書館用書籍の「TRC」などを運営する。
  • ヴィレッジヴァンガード:サブカルチャーグッズと併せた書籍の販売で有名。

「再販制度」の存在により価格競争が起こらない

日本で販売されている新しい雑誌や書籍は、全国各地どこの書店で購入しても価格が統一されています。それは、出版物再販売価格維持制度(再販制度)によって、販売価格に地域差が生じないよう調整されているからです。再販制度を取り入れている書店は、独自価格の販売ができないかわりに、他の流通業界にありがちな価格競争が起こらないのが特徴です。

「委託販売制度」により書店が在庫を抱えることはない

価格競争が起こらないと、地域や店舗によっては同じ出版物でも在庫が発生するケースがあるかもしれません。もし在庫をそのまま抱え続けると、ストックルームがいっぱいになり毎日のように入荷する新刊本の取り扱いが難しくなります。そこで、出版業界では「委託販売制度」を導入して書店が在庫を持つことを防いでいるのです。この制度は一般的な卸売業者による仕入と異なり、取次業者は書店に対して出版物を「提供」する仕組みになります。そのため、書店は一定期間を経過すれば、委託が終了したとして出版社に返本することができ、在庫を確保する必要がありません。

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出版業界の現状

1996年をピークに売上は長期低落傾向

ここからは出版業界の現状について確かめましょう。現状としてまず挙げられるのが、「出版物の売上が長期低落傾向」であるという点です。CnetJapanの記事によると、1996年に2兆6563億円の売上を記録して以降、売上額が減少を続けています。日本出版協会の発表による2016年の売上実績は1兆4,709 億円と、ピーク時だった1996年より40%以上ダウンしています。

実写・アニメ化などの影響によりコミックスの売上は堅調

このように、出版物全体の売上は減少を続けているものの、安定した売上を見せている分野があります。それは「コミックス」です。日本出版協会の統計によると、コミック雑誌の販売を含めた売上額は減少しているものの、単行本書籍だけに限った売上では90年代とほぼ同じ水準をキープしており、堅調な傾向を続けています。

理由として、コミック作品は固定的なファン層が存在することが挙げられるでしょう。また、アニメや実写ドラマ・映画化など、メディアミックス戦略によって一般層にもファンを広げながら、売上部数の底上げを図ることによって大きな落ち込みを防いでいるのです。

再販・委託販売によるビジネスモデルは崩壊寸前

現在の出版業界では売上額の減少が続いています。電子書籍が流行するいまでは、出版物を発行しても売れ残りが発生する状況です。この影響で、中小の取次業者および書店の経営が立ち行かなくなっています

ここ数年、大阪屋や栗田出版販売が経営破たんしました。これらの企業で取り次いでもらっていた地方の中小書店が取次業者を失ったために、閉店に追い込まれる状況が相次いでいるのです。そのため、今後の動向次第では再販・委託販売によるビジネスモデルが崩壊するかもしれません。

電子出版市場の業績は右肩上がり

ここまで、出版業界全体の不振が続いているとは取り上げましたが、ある分野に限っては成長を続けています。それは「電子出版市場」です。電子出版市場の業績は誕生以来右肩上がりを続けています。2016年の電子書籍の売上は1,909億円で、2015年と比べて27%も増加しました。特にコミック作品の電子書籍が好調で、コミック分野の売上は電子出版市場全体の約76%を占める1,460億円を記録しています。

出版業界の今後

紙媒体の出版物は雑誌を中心に売上不振が続く

ここからは、出版業界の今後について見てみましょう。まず、紙媒体の出版物は雑誌を中心に今後も売上不振が続くとみられています。現状で紹介したCnetJapanの記事に掲載されている、雑誌扱いされているコミックスを除いた雑誌の売上を見てみると、かなり急激に売上が低下していることがわかるでしょう。

この傾向は今後も続くとみられ、週刊誌、月刊誌関係なく休刊・廃刊・統合の流れが進むかもしれません。その影響もあって、取次業者や書店などは大規模な事業展開をおこなう企業を除いて、売上減少に伴い統合や閉店などが相次ぐ可能性があります。

電子出版はコミックスが中心となって売上増が見込まれる

インプレスの調査によると、電子出版の売上高は2012年と比べ約2.8倍の伸びを見せています。

電子出版市場の規模推移によると、この状況が順調に推移すれば、2020年ごろには3,000億円程度にまで拡大するのではないかと予想されています。そんな電子出版市場拡大のけん引役となるのは、やはりコミックス関連でしょう。今後、この市場が拡大を続ければ、出版物全体の売上減少は緩やかなものになるかもしれません。

出版業界でも「コト消費」が進行して書籍に復活の兆し

現在の流通業界では、商品を手に入れることが目的だった「モノ消費」から、買いたい理由や目的が明確な商品を手に入れる「コト消費」が進行しています。この傾向は、出版業界においても見られ始めています。
読書人ウェブによると、2015年にお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんが書いた「火花」が大ヒットを記録したり、児童向けの絵本や書籍、料理本や解説本などテーマを絞り込んだ作品が人気を集めたりするなど、目的をもって購入する書籍は比較的好調です。

一方で、話題性で売り上げが伸びる雑誌は、これといって大きな発行部数の伸びを見せていません。ガベージニュースによると、「文春砲」等で話題を集めた週刊文春もここ数年の発行部数は60万部台の状況が続いているそうです。

取次業者に頼らない仕入方式が進む可能性

2017年5月、ネット通販大手のAmazonが出版社と直接取引して出版物を販売することがわかり話題となりました。また、出版社も自社の出版物を電子書籍化して販売するようになってきています。これら一連の流れは、既存の委託制度を根本的に覆す動きともいえます。

この流れが加速すると、委託制度は縮小化をたどり、地域のニーズや需要に合わせて商品を発注し、必要な分だけを仕入れる一般的な仕入方式に変更する可能性が考えられるでしょう。

再販・委託に頼らないビジネススタイルによって「書高雑低」が進む

委託制度から一般的な仕入方式にシフトすると、大打撃を受けるのが雑誌でしょう。書店が売上変動しやすい雑誌を入荷しているのは、委託制度を活用することで売れ残りが発生しても返品できるからです。しかし、委託制度が成立しなくなると、売れ残った雑誌が返品できず「不良在庫」化してしまいます。

一方、書籍は興味を持った方だけが購入するため、ある程度仕入量を調整でき、余計な在庫を持つ必要がありません。そうすると、書店は在庫が少なく済む書籍の売場を拡大させるため、雑誌売上が書籍売上を下回る「書高雑低」が進むかもしれません。この傾向はすでに表れており、2016年は41年ぶりに書籍売上が雑誌売上を上回りました。

出版業界の今後は「電子出版」と「書高雑低」への対応が生き残りの鍵となる

出版業界の今後を見てきました。この後も出版部数が減少する流れが続くと見られます。

ただし、特に落ち込む傾向にあるのは雑誌であり、書籍は電子出版市場での好調もあって、横ばい傾向にあります。この傾向がもし続くと、雑誌売上の後ろ盾となっていた再販・委託制度から、出版社との直接取引や仕入量調整で在庫をコントロールする流れになるかもしれません。

また、固定的な需要が存在するコミックスや児童書・専門書など、書籍分野の拡充によって生き残りを図る動きが出てくるでしょう。

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