Q.まずはCODE GYM Academyがどんなものか教えてください。一言で言うなら学生向けのエンジニアスクールですね。限りなく安く学生にプログラミング学習をさせられないかと考えたうえでできたサービスであり、ほかのプログラミングスクールと大きく違う点として、2021年と2022年の運営においては非営利であること、協賛企業によって費用が賄われている完全無料のサービスという点が挙げられますまずはハーバード大学のコンピューターサイエンスの1単位と同じレベルの学びを得ることができます。申請をすれば、ハーバード大学から履修証明書を取得できるので、履歴書にも「ハーバード大学 CS50修了」と書くことができ、コンピューターサイエンスの基礎を勉強したことをエビデンスとして示せます。
Q.このサービスが立ち上がった経緯などについてもお伺いできますか?当社ではもともと社会人向けにプログラミングスクールをおこなっており、その中で現役学生や、学校を中退したばかりの学生からの相談が増えてきたことが背景にあります。当社では、プログラミングスクールにおいて「学費の出世払い」、スクールを卒業して就職後に授業料を払うISA(所得分配契約)といった方式も採用しています。それを見た学生からのお問い合わせがここ最近で非常に増えてきていました。学生は社会人に比べ金銭的な余裕がなかったりと、ローンも組みづらいですよね。そこから学生からのプログラミングスクールのニーズは一定あると判断し、当社の提携・協賛企業にその旨を伝えてみたところ、協賛の声がどんどん集まり、「学生に半年ほどの期間をかけてプログラミングを教えよう・学生向けのスクールを設立しよう」という企画が誕生しました

Q.実際学生からの反応はどのようなものでしたか?昨年2021年に初めておこなってみたのですが、なんと1,000人もの学生からのエントリーがありました。全都道府県から1,000人という数字に本当に驚きましたね。
Q.ちょうど今「エントリー」というワードが出ましたが、参加にはエントリーが必要なのですか? そのあたりの仕組みについてもお伺いしたいです。はい、無料で誰でも参加できる・かつ協賛企業に運営費を出していただいている分、学生の本気度というのは必ずチェックしています。ですのでまずは「エントリー」として申込をしていただいて、その後入校前に適性テストをおこなっています。もちろん、無料である分テスト当日に姿を見せない学生もいるわけです。そしてテストでは入学するにあたり持っておいてほしい最低限の知識(高校1年生までの知識で学ぶ数学の問題や論理的思考力、日本語の読解力、ITに関する基礎的な知識や意欲)があるかをチェックし、2021年は春・秋合わせての最終的な入校者は638名となりました。
Q.比較的入りやすい学校であるように見えますね。そうですね。しかしこのCODE GYM Academyはサバイバル方式のようになっており、継続には覚悟がいると思っています。まず欠席を2回すると強制退校。無料だけれども、出席管理を厳しくしなければ学習のコミュニティの質が下がってしまいますから。むしろスポンサーから大切なお金を預かって無料で受けられるプログラミングスクールを運営しているからこそ、自分の力で最後まで頑張りたいという強い気持ちがある人に残ってほしいという思いがあります2021年は、入校者638名中卒業者は153名。率にして表すと完走したのは24%ほどとなります。

Q.入り口のハードルは低くても、継続には本人の覚悟が必要ということですね。ちなみに入校する学生にはどのようなことを求めていますか?まずはエントリーの段階でエントリーシート(ES)の提出をお願いしています。これはきちんとすべて丁寧に拝見しています。その中で、たとえば極端な例ですが、志望動機を3行しか書いていない人は入校をお断りしています。「なぜプログラミングを学びたいのか」この動機がしっかりしていないと続けられないと思います。ある程度のモチベーションの確認をし、この時点でおよそ2~3割はお見送りになるケースが多いです。またプログラミングとは算数と数学の基礎に少なからず関係してくるため、論理的思考力は適性試験で簡単にチェックしています。正しく文章が読めるか、規則性がわかるかなどですね。SPIのようなものと考えていただければと思います。この試験で著しく成績が悪くないことが大切です。このチェックでは学力を測りたいのではありません。できるだけ多くの人に学習のチャンスを与えたい。しかしながら、入校時点でのスキルのばらつきが多すぎると運営にも支障が出てしまうため、どうしても必要なプロセスです。学歴などは関係のない義務教育までの範囲での問題にしており、それをクリアできた人すべてにチャンスを、そしてそこからは自分の熱量と覚悟次第、という形にしています。
Q.ここまでステップがしっかりしていると、それだけでふるいにかけられそうですね。そうですね。このステップを「面倒」と思う人はつまり本気度が低めだということ。ステップを設けることで本気度が低い人はそもそも来ません。最初からある程度モチベーションが高い人たちで学習を始めた方が誰にとっても良いはずですから。
Q.無事入校した人たちは、そこからどのようにして学び卒業していくのでしょうか。入校後は毎週土曜日に8時間、プログラミングについて学んでいくこととなります。グループワークもおこない、毎週受講生をシャッフルしチームを作って課題に取り組んでもらっています。それを17週連続(2022年春の例)で受けてもらい、最後にはオリジナルサービスを企画し、発表をおこなって晴れて卒業となります先に挙げた入校生と卒業生の数字でわかると思いますが、ここから徐々に自主退校される人が出、総人数が減っていくわけです。でも、私は正直それでいいと思っています。ボリュームが多い学習課題に対し、オンラインで数百人と一緒に学びを進めていく。まったく知らない人とチームを組み課題に取り組む。わからないことも多いうえ、コミュニケーション能力も必要とされますから、かなりストレスがかかる環境ではありますよね。ただ、こうすることで、さまざまな人が各々頑張っている姿を見て、講師とも受講生ともコミュニケーションを図りながら学びを進めることができます。惜しくも辞めてしまった仲間の姿を見ながら、最後まで残った人たちはとても仲良くなっていますし、ストレスがかかる環境下、無料だからいつでも辞められるという中でやり抜いたという誇りを手にすることもできます。このこと自体が私はとても素晴らしいと思っています。
Q.たしかに、無料である分、真に自分の意志で学びに来て、それをやり遂げたという自信がつきそうですね。はい。多くのプログラミングスクールでは受講料がかかる分、最後のほうは自分の意志にかかわらず「元手を取らなきゃ!」という思いで受講する学生も多いと思っています。でも、「損しないために学ぶ」というのは本質的ではありませんよね。無料で、誰に強制されたわけでもない分「辞める・辞めない」は自分で決められるのです。そんな中で学習を続けてきたのが卒業生であり、彼らは卒業できる時点で、非常に優秀なマインドセット、やり抜く力を持っているのです。自分の頭で考えること、就職後も「あのときがんばれたからあと少しやってみよう」というメンタルタフネス、そしてやり遂げる継続力。このCODE GYM Academyを通じて、プログラミングスキルだけでないこういった力も身に付きます。そしてこういったスキルは就活で高く評価されるものであり、社会に出てからも活きるものです。
Q.続く人・続かない人で傾向はあるものですか?

そうですね、まずはわからないときにすぐに質問できる人だと思います。プログラミングは最初のハードルが高いので、どうしてもすぐにつまずいてしまうもの。そんなときに自分だけで悩んで人にたずねるのを遠慮してしまう人は伸びにくいと思います。「こんなレベルできいてもいいの?」と思うことでさえすぐにメンターに聞きに行く人は成長スピードも速いですね。使えるものは全部使うというくらいの気概で入ってきてほしいですね。あとは何か一つに熱中したことのある人というのも続きやすいです。一日中ゲームをしていられる、本を1日数時間で読み切れるというような人ですね。またおもしろいデータがあります。入校生の文理の割合は、文系55%理系45%でした。理系学生のほうが多く残るのではと考えていたのですが、卒業時の文理の割合はおおむね5:5のままで、優位な差が出ませんでした。また卒業生を在籍校の一般的な偏差値で集計しても、「学歴が高い方が残りやすい」などということはありませんでした。
Q.どんな人でも熱量次第で卒業は可能ということですね。そういうことです。どんな人にもチャンスはあるということ。また、逆に卒業できなかったからといってプログラミングが向いていないとも思いません。短期間のブートキャンプで、他者とグループワークなどもおこなうというスクールの独自のやり方が合わなかっただけかもしれませんし、学習ペースは個人差がありますから。コツコツと自分のペースで学ぶのが向いているという人もいるでしょうしね。
Q.入校を検討している人、一歩踏み出そうか迷っている学生にメッセージをお願いします。就活を意識し始めた早めの段階で、こういったガクチカにもつながる短期のプログラミングスクールを知れたのはすごく良いことだと思います。やろうかなと思えたということは、今後どこかのタイミングで「やる」ことになる可能性は高いでしょうから。興味がある人は、まず公式サイトをよく読んでいただいて、卒業生インタビューやカリキュラムに目を通してみてください。さらに卒業生のTwitterアカウントを見てみるなり、小さいことでいいのでぜひ行動してみてください。Twitterで「CODE GYM Academy」で検索してみると、卒業生の声や就職後の様子が見られますよ。説明会でも、エントリーを悩む人はとりあえずエントリーするといいとお話ししています。無料ですし言ってしまえばいつでも辞められるわけですから。始める前に、本気になれるかはわからなくてもいいのです。始めてみてからわかるものだってあるはず。失うものは何もないので、ぜひチャンスだと思って飛び込んでみてほしいです

鶴田 浩之 さん鶴田 浩之 さん
鶴田 浩之 さん

Hiroyuki Tsuruta●1991年長崎県諫早市生まれ。13歳で初めてプログラミングに触れ、大学在学中の20歳でLabitを創業。大学生向けのスケジュール管理サービス「すごい時間割」を開発、2014年にリクルートキャリアへ事業売却。2014年にはゲームエイトを設立、2016年には渋谷・道玄坂に書店「BOOK LAB TOKYO」をプロデュース。2016年には本に特化した日本初のバーコード出品フリマアプリ「ブクマ!」を開発、翌年にIPO前のメルカリに参画し、グループ会社執行役員に就任。2019年にCODEGYM(旧LABOT)を設立し、現職