Q.まず、つながるキャンパス(つなキャン)とはどういった取り組みでしょうか。つなキャンは、「あなたの出会いと学び、挑戦をボーダーレスに」をコンセプトに日本全国のU24世代の若者および100を超える団体、企業、個人等の社会人が集うオンライン上の仮想キャンパスです2020年4月に新型コロナウイルスの影響を受け全国の大学・高等学校が休校やオンライン授業への移行を余儀なくされた社会情勢の中でもオンライン上で、可能な限り社会との接点を生み出すべく設立されました。対象年齢は16歳から24歳で、現在は「つながるキャンパス運営委員会」が運営を担っています。現在この運営委員会は50名ほど、私のようにどこかの企業に所属しているいわゆる兼業の人や学生といった多様な人々で組織されています。

つなキャンは「出会い・学び・挑戦」の3つのテーマとそれに準ずる特徴があります。

①年齢や肩書、距離を超えた出会いがあること
②学問的なテクニカルな学びではなく、リアルで等身大の生き方や働き方についての学びが得られること
③小さな一歩の挑戦を積み重ね、未来につなげていけること。そしてそれを応援し合えること

これらがつなキャンにしかない唯一無二の特徴です。
Q.つなキャンの特徴についてもう少し詳しくお伺いしたいです。まずは「出会い」。つなキャンには本当にいろいろな人に出会えます。地域企業の社長もいれば大企業で働くサラリーマンもいる。高校生や大学生もいれば、学校には通わずに起業や長期インターンをしている人もいる。夢や目標に邁進している人もいれば、自分のやりたいことを探している人もいる。住んでいる場所や通っている学校を超えて、多様な人々、多様な価値観と出会うことができますここは「学び」に通じるのですが、採用面接ではない場において社会の第一線で活躍する社会人と日常の延長線上で出会うことができるのは、キャリア観の形成において非常に重要だと思っています。就活はどうしても企業から発信される耳あたりが良い言葉からキラキラしたイメージを抱えがちです。でも実際の仕事には泥臭い場面も、つらくてかっこよくない場面もあるものです。SNSやWebサイトでは知ることができないこういったリアルな一面を、その人を目の前にして学べるのもつなキャンの特徴です。
Q.先ほどおっしゃっていた「等身大の生き方や働き方が学べる」とはたしかに重要ですね。はい、とても大事だと思います。プログラムのひとつである「社会連携ゼミ」がつなキャンの「学び、挑戦」の特徴を体現しています。大学のゼミのようなイメージで、社会人サポーターがゼミオーナーとなり、教育・環境・食などの多様なテーマを掲げてゼミを開講しています。

<社会連携ゼミ>

大学のゼミのようなイメージで、社会人サポーターがゼミオーナーとなり、教育・環境・食などの多様なテーマを掲げてゼミを開講している

ここでおもしろいのが、大学のような一般的なテーマのゼミだけではないということ。たとえば過去には「遺跡発掘」をテーマにしたゼミがありました。日常生活の中で、遺跡発掘の専門家の話を直接聞けることはめったにないですよね。このような特徴的なテーマ自体やそれにかかわる人々に、つなキャンに参加することで直接交わりを持つことができるのです。人脈やきっかけがまったくないのに「自分の知らない世界を見に行こう!」と思い立ち行動することは難しいですが、つなキャンに身を置くと普段からそういった新しい出会いや発見があるのです新しい出会いがあるということは、いろいろな職業や生き方の学びにもつながります。また、やりたいことがわからない人にとっては、小さな発見や行動の積み重ねを通じ、やりたいことがだんだんと見えてくるのではないかと思います。
Q.つなキャン立ち上げの背景や意図についても教えてください。つなキャンは、新型コロナウイルスの流行による1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に開設されました。活動の目的は以下の通りです。

コロナ禍になって大学の休校やオンライン授業が始まったことで、急に社会との接点が断たれてしまいました。留学にいけない、インターンにいけない、そもそも友人がつくれないなどそういった制限を受ける若者たちのあらゆる学びの機会損失ということを目下の課題解決とし、それを防ぎたいという思いで設立しましたまた長期的にみると、次の新しい世代の若者が社会に参画するための入り口になるとも考えています。若者と社会との新たな接点となってほしい、そういった目的で設立・運営しています。2022年6月時点で、つなキャン生と呼んでいる参加者は730名、そして学生と地域・社会を結びつける役割の社会人サポーターは190名ほど。日本全国ならびに国外の企業・団体・地域の社会人と学生がオンライン上でキャンパスを構成しています。
Q.このつなキャンで解決したい就活市場における課題は何でしょうか。キャリアは、就活のタイミングでだけ考えればいいものではないということですね。何歳であっても自分のキャリアについては考えるべきですし、自分の選択については自分で責任を持つものだと思いますつなキャンにおいて「キャリアについて考える」という役割を担っているのが「キャリアデザインラボ マヴィ」というプログラムです。大学と同様につながるキャンパスにはキャリアセンターを設置しており、このプログラムはキャリアセンターにおいて運営をしています。
Q.では「キャリアデザインラボ マヴィ」についても詳しく教えてください。プログラム名の「マヴィ(Ma Vie)」とは、フランス語で「私の人生」「私らしい生き方」という意味があります。つなキャンの社会人サポーターは全国各地の企業で働くサラリーマン、公務員、フリーランス、NPO職員など非常にさまざま。マヴィは、多様なキャリアを持つ社会人と出会い、ともに考えながら、自分らしい生き方・働き方を探求するプログラムです。1期につき約30名で3ヶ月間取り組むものになっています。

まずは説明会でこれから3ヶ月の過ごし方を考えます。同時にメンターもここで決まりますが、このメンターは社会人サポーターと学生運営メンバーの2人体制です。その後ラボ活動に入ります。ラボ活動はグループセッション・キャリアカフェ・個人面談の3つから成り立っています。グループセッションではプログラムに参加するメンバー全員が集まってキャリアの基礎知識をインプットし、そこから得た学びをメンバー同士で語り合うことで、相互に学びを深めていきます。キャリアカフェでは、多様な働き方・生き方を実践する20名以上の社会人や学生と、まるでカフェにいるかのようなカジュアルな雰囲気で対話をします。それらの経験からこれまで学んだことやキャリアについての考えを、メンターと一緒にまとめブラッシュアップし、それを3ヶ月の締めとしてネクストアクション共有会で報告する、といった流れですね。これが卒業式のようなものです。
Q.参加学生にはマヴィでどんなことを学んでほしいですか?一般的に就活が始まる大学3年生の3月からキャリアについて考え始め、内定をもらうと考えることをやめてしまう人が多いと思います。その「キャリアについて考えている期間」は、長いキャリアの中で考えれば本当に一瞬です。高校生や大学生の早いタイミングから多くの人々と接点を持ち、キャリアの選択肢の引き出しを充実させることが納得感のある選択につながります。就職先の選択をしたその先にどんな未来を観ているのか、どんな未来をつくりたいのか、さまざまな角度からその選択について考える時間や機会、それを支援してくれる人が必要です。つなキャン、マヴィの対象は16歳から24歳ですが、参加者には高校生や大学1~2年生が増えてきています。またマヴィでは多様な働き方・生き方を実践する人々との対話の機会があります。働き方だけではなく、生き方そのものとして「こういう大人・社会人になりたい」と思えるようなロールモデルになる人との素敵な出会いもあるかもしれません。そしてそのロールモデルはきっとあなたのキャリアを応援してくれるはず。マヴィに参加する学生には、このような出会いや学びを楽しみながら、自分のキャリアについて考えを深めてほしいです。
Q.このつなキャンはどんな学生に参加してほしいですか?自分が社会にとって役に立つのだろうかと何かもやもやしていたり問題意識や悩みを抱えていたり、または何か新しいことに挑戦してみたい、行動したいという人に参加してほしいです。一歩踏み出すための場所として、つなキャンを活用していただければと思います。年齢も、国籍も、経済状況も、立場も関係ありません。多様な人々が集まるのがこのつなキャンです。ぜひつなキャンでお会いしましょう。

竹井 もゆこ さん竹井 もゆこ さん
竹井 もゆこ さん

Moyuko Takei●外資系コンサルティング企業、大手自動車メーカーを経て、外資系組織コンサルティング企業へ。人事組織コンサルタントとして、日系グローバル企業のカルチャー変革やジョブ型人事制度の導入など、複数のグローバルプロジェクトのマネジメントを担う。つながるキャンパスには2020年の設立当初から協働パートナーとして参画。2022年4月より現職で約50名規模の運営委員会立ち上げを担う